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HPLCでのゴーストピーク◇原因は◇対策は

HPLCを使用する際にしばしば発生するトラブルはゴーストピークの出現かと思います。

 

液クロ虎の巻―誰にも聞けなかったHPLC Q&A

 

ゴーストピークとは

ゴーストピークとは、本来検出されるはずのないピークのことです。

つまり、注入した試料に由来しないピークです。

試料に含まれる成分のみを評価の対象としなければならないのに、試料に由来しないピークが検出されてしまったら、分析の目的を果たせなくなってしまいますね。

 

原因は

原因はいくつか考えられますが、主に以下が原因となることが多いです。

・前に注入したサンプルのキャリーオーバー

 ゴーストピークが検出される前に注入した試料がインジェクタ部分などに残存してしまうと、次の試料を注入した際に、一緒に溶出されてしまうことがあります。

 何度か注入を繰り返す中で、ゴーストピークが小さくなっていく場合は前注入のキャリーオーバーが疑われます。残存してしまった成分が注入を繰り返すことで洗浄されるためです。

・溶存空気

 移動相は通常脱気したものもしくはオンライン脱気したものを使用しますが、脱気が不十分な場合、ゴーストピークとして現れることがあります。

・移動相中の不純物

 移動相中に均質に不純物が含まれる場合、それがベースラインとなるため、問題になることは少ないですが、グラジエンと分析などの場合は、溶媒比率が変わることで、溶出の仕方も変わってしまうので、ピークのような形でクロマトグラムに現れてしまうことがあります。

・試料のコンタミ

 これはゴーストピークというか微妙かもしれませんが、試料自体が汚染されている場合も当然通常見られないピークが検出されることになります。

 この場合、試料自体が汚染されているため、何度注入しても同様のゴーストピークが検出され続けることになります。

・試料の劣化

 試料は必ずしも安定であるとは限りません。調製した後、分解が進んだりする場合もあります。調製直後の試料と調製後時間の経った試料を測定することでクロマトグラムに変化があるかどうかを確認しましょう。

・使用器具の汚染

 これはあまり考えたくないですが、試料の調製に使用する器具が汚染されていた場合は、その汚染由来のピークが検出されてしまう可能性があります。

・装置内の汚染

 ブランク溶液を何度も注入してもゴーストピークが見られる場合、装置内が汚染されている場合があります。

 

対処法は

・前に注入したサンプルのキャリーオーバー

 多くのHPLCインジェクターのオート洗浄機能がついており、洗浄用の溶媒をセットすることになります。

 キャリーオーバーする成分を溶かしやすい溶媒を洗浄溶媒として使用することで、キャリーオーバーを防止することができます。

 また、キャリーオーバーしやすい成分を注入した後に、何本か洗浄用のサンプルを注入するような設定にするのも有効かと思います。

・溶存空気

 できるなら、移動相をオンラインで脱気できる装置を購入すると良いと思います。装置に繋ぐ前に、移動相を脱気する方法もありますが、脱気しすぎた場合、逆にガスを溶かしこみやすくなることもあるそうです。

 また、脱気の際は、アスピレーターで陰圧にしながら行うことが多いかと思いますが、移動相が2液以上の混液の場合、揮発しやすい成分から蒸発してしまい、組成が変わってしまうので注意が必要です。

 基本的には、装置自体にデガッサーと呼ばれる脱気装置をつけていれば大きな問題はないかと思います。

・移動相中の不純物

 なんの操作を行う場合でもそうですが、操作をする際は綺麗な環境で操作しましょう。移動相にコンタミしてしまった場合はそれを取り除くことは基本的に不可能ですし、できるとしても作り直した方が早いので、諦めて移動相を作り直しましょう。

 また、移動相に使用する試薬のグレードにも注意しましょう。特に、UV検出器を短波長で使用する場合は、UV吸収の少ないHPLCグレードのものを使用すると良いと思います。

・試料のコンタミ

 試料がコンタミしてしまった場合も、基本的には試料を調製しなおしましょう。

 すでに成分がわかっている試料の分析の場合はコンタミに気付きやすいですが、未知物質の分析の場合は、そもそもそのピークが試料由来かどうかをきちんと判断する必要があります。試料の性質に関する知見を持つのも大切ですが、簡単に試料由来か判断するには、検体の数を増やす方法があります。例えば10個試料を調製して10個とも同じようにコンタミすることはありませんので。

・試料の劣化

光によって分解する可能性がありますので、バイアルは褐色のものを使用したほうが無難かと思います。また、温度による影響を受ける場合はサンプルラックに温調機能がついている機種を使用するようにしましょう。可能であれば溶解に使用する溶媒も検討できると良いと思います。

・使用器具の汚染

 使用器具については、しっかり洗浄を行うようにしましょう。器具に吸着しやすい検体を使用した場合は、適切な溶媒などを使用してきちんと洗浄しましょう。使用する前に、試料調製に使用する溶媒で共洗いして使用すると、汚染のリスクを低下させることができます。また、HPLC用のバイアル由来のピークが確認されることもあるそうですので、不活性バイアルの使用も検討しましょう。

・装置内の汚染

 移動相や試料はできるだけ清浄なものを使用するようにしましょう。必要に応じて、試料の注入前にフィルタ処理を行うのも効果的だと思います。特に、今日雑物が多い試料の場合は必ずフィルタ処理を行うようにしましょう。

 装置の洗浄には、水、アセトニトリル、メタノール、イソプロパノール混液に蟻酸を少量添加した洗浄液を用いることが多いです。洗浄後は水をしばらく通液するのを忘れずに行う必要があります。

 また、塩を含む移動相をよく使用する場合、LC装置内に塩が析出していることがよくあります。塩を含む移動相を使用した場合は、こまめに水洗浄をしたほうが良いと思います。

 

まとめ

今回は液体クロマトグラフィで見られるゴーストピークの原因を7つ紹介しましたが、私個人の経験で言うと、前注入のキャリーオーバーの頻度が高い印象でした。こちらについては、装置の高性能化に伴い減って行くのではないかと多います。

HPLCを多く使っていくと、今回紹介したような理由以外でもゴーストピークが見られることもあると思います。中には、何が原因かよくわからないけどいつの間にかうまくいったといったこともあると思います。

経験を積むごとに何が原因かの勘所のようなものがつくと思います。

装置を使用していて、もっとも勉強になるのはトラブル対応の時かと思います。

良い勉強と思ってトラブルにも対応できると良いですね。

 

HPLCは多くの参考図書がありますので、興味のある方は購入してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

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