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製薬会社の新人におすすめの本7選|GMP・品質管理・HPLCを基礎から学ぶ

本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。

製薬会社に入社すると、大学までの勉強とは少し異なる知識が必要になります。

例えば、

・GMPとは何か
・なぜ記録を残さなければならないのか
・品質管理と品質保証は何が違うのか
・HPLCなどの分析機器をどう扱うのか
・錠剤やカプセルはどのように作られるのか
・試験結果や製造データをどう評価するのか

など、配属されて初めて学ぶことも少なくありません。

しかし、製薬業界の専門書は種類が多く、価格も比較的高いため、どれから読めばよいか迷いやすいと思います。

私は原薬・後発医薬品メーカーの品質部門で約15年間働いてきました。その経験を踏まえて、今回は製薬会社の新人におすすめしたい本を7冊紹介します。

すべてを読む必要はありません。まずはGMPの入門書を1冊選び、その後に自分の配属先に合った本を読むのがおすすめです。

先に結論|配属先別のおすすめ

製造、品質管理、品質保証、研究開発では、必要となる知識が少し異なります。

迷った場合は、次のように選んでみてください。

・製薬会社の新人全般
 →『ゼロから学ぶGMP 第2版』

 

 

・QCや分析部門に配属された人
 →『すぐ身につく 分析化学・機器分析の実務』

 

 

・HPLCを担当する人
 →『液体クロマトグラフィー』

 

 

 

・試験法やバリデーションを担当する人
 →『ゼロから学ぶ 分析法バリデーション』

 

 

・製造部門や製剤開発に配属された人
 →『基礎から学ぶ製剤化のサイエンス 』

基礎から学ぶ製剤化のサイエンス 第5版

基礎から学ぶ製剤化のサイエンス 第5版

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・品質データや工程能力を扱う人
 →『ゼロから学ぶ医薬品品質統計』

 

 

 

・QAとして省令や事例集を確認する人
 →『医薬品GQP/GMP解説 2023年版』

 

 

最初から7冊すべてを購入するのではなく、現在の業務で必要な1~2冊から始めれば十分です。

1.ゼロから学ぶGMP 第2版

製薬会社の新人が最初に読む本としておすすめしたいのが、『ゼロから学ぶGMP 第2版』です。

GMPとは、医薬品を一定の品質で製造するための製造管理及び品質管理の基準です。

製薬会社では、製造部門だけでなく、品質管理、品質保証、技術、研究開発など、多くの部門がGMPと関係します。

本書ではGMPの基礎的な考え方に加えて、仮想の査察事例も取り上げられています。

単に規則を覚えるだけでなく、

「なぜこの対応が必要なのか」
「査察官はどこを確認するのか」
「記録や手順に何が不足しているのか」

を考えながら学べるのが特徴です。

GMP省令や通知をいきなり読んでも、初めての人には難しく感じられます。まず本書で全体像をつかんでから、必要な省令やガイドラインを確認すると理解しやすくなると思います。

こんな人におすすめ

・製薬会社に入社したばかりの人
・GMPの全体像を学びたい人
・製造、QC、QAに配属された人
・GMP教育を受けてもよく理解できなかった人

 

 

2.すぐ身につく 分析化学・機器分析の実務

QCや研究開発など、分析業務を担当する新人におすすめしたい一冊です。

分析化学の本には、理論や計算を中心に説明した教科書も多くあります。

一方、本書は分析の基礎だけでなく、前処理、分析手法の選び方、器具や機器の扱い、記録の作成など、実務を意識した内容になっています。

分析業務では、装置の操作方法を覚えるだけでは十分ではありません。

・試料を正しく採取する
・適切に秤量・希釈する
・コンタミネーションを防ぐ
・測定条件を確認する
・結果と操作を記録する

といった一連の作業が、試験結果の信頼性につながります。

大学で化学を学んでいても、実際の試験業務に不安がある人に向いています。

こんな人におすすめ

・QCや研究開発に配属された人
・初めて分析業務を担当する人
・試料調製や前処理の基本を学びたい人
・分析記録の考え方を知りたい人

 

3.液体クロマトグラフィー

製薬会社のQCでは、HPLCを使用する機会が多くあります。

しかし、操作手順だけを覚えていると、圧力上昇、保持時間の変動、ピーク形状の異常などが起きたときに、原因を考えるのが難しくなります。

『液体クロマトグラフィー』は、HPLCの基本原理と実際の分析の両方を学べる本です。

装置構成や分離の考え方だけでなく、実際に分析する際に知っておきたいポイントもまとめられています。

HPLCは、試験方法どおりに操作すれば必ず正常な結果が得られるわけではありません。

カラム、移動相、流量、温度、試料溶液など、複数の要因がクロマトグラムに影響します。操作を覚え始めた段階で原理も一緒に学ぶと、トラブルへの対応力を身につけやすくなります。

こんな人におすすめ

・製薬会社のQCに配属された人
・初めてHPLCを操作する人
・HPLCの原理から理解したい人
・分析トラブルの原因を考えられるようになりたい人

 

 

 

関連記事

・HPLC初心者におすすめの本5選
https://semiritasan.hatenablog.com/entry/2026/09/05/131033

・「液体クロマトグラフィー」のレビュー
https://semiritasan.hatenablog.com/entry/2024/12/22/151949

4.ゼロから学ぶ 分析法バリデーション

HPLCなどの操作に慣れてきた人に、次の一冊としておすすめしたい本です。

分析法バリデーションとは、使用する分析法が、その目的に適していることを科学的に確認することです。

製薬会社では、

・真度
・精度
・特異性
・直線性
・範囲
・検出限界
・定量限界

などを評価します。

新人のうちは、決められた試験方法に従って測定することが中心かもしれません。

しかし、分析法バリデーションを学ぶことで、

「なぜこの試験条件なのか」
「なぜこの項目を評価するのか」
「この分析結果はどこまで信頼できるのか」

という視点を持てるようになります。

本書はタイトルどおり、分析法バリデーションを基礎から学びたい人に向いています。

こんな人におすすめ

・製薬会社のQCや研究開発に配属された人
・分析法バリデーションを初めて担当する人
・試験法設定や技術移管に関わる人
・HPLC操作から一歩進んで学びたい人

 

 

5.基礎から学ぶ製剤化のサイエンス 

製造部門、製剤開発、技術部門に配属された人には、『基礎から学ぶ製剤化のサイエンス 第4版』がおすすめです。

錠剤、カプセル剤、顆粒剤などが、どのような考え方で設計・製造されているのかを基礎から学べます。

例えば錠剤の製造では、単に原料を混ぜて圧縮しているわけではありません。

原料の性質、粒子径、水分、混合、造粒、打錠、コーティングなどが、製品の品質に影響します。

製造手順だけを見ていると、一つひとつの工程が必要な理由を理解しにくいことがあります。

製剤学の基礎を学ぶことで、

「なぜこの工程があるのか」
「この条件が変わると品質にどう影響するのか」
「どの工程が重要なのか」

を考えやすくなります。

製造部門だけでなく、変更管理やバリデーションを担当するQAにも役立つ本です。

こんな人におすすめ

・医薬品の製造部門に配属された人
・製剤開発や生産技術を担当する人
・錠剤やカプセルの作り方を基礎から学びたい人
・変更管理やバリデーションを担当するQA

 

基礎から学ぶ製剤化のサイエンス 第5版

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6.ゼロから学ぶ医薬品品質統計

製薬会社では、多くの場面で数値を扱います。

例えば、

・試験結果のばらつき
・工程能力指数
・安定性試験の傾向
・分析法バリデーション
・プロセスバリデーション
・製品品質の照査
・抜取検査

などです。

平均値や標準偏差を計算できても、それだけでデータを正しく評価できるとは限りません。

『ゼロから学ぶ医薬品品質統計』は、一般的な統計だけでなく、医薬品の品質管理で統計をどのように使うかを学べる本です。

新人が最初からすべてを理解する必要はありませんが、QC、QA、製造技術、研究開発などでデータ評価を担当するようになったときに役立ちます。

基礎的なGMPや日常業務を覚えた後、もう一段専門性を高めたい人に向いています。

こんな人におすすめ

・QCやQAで品質データを扱う人
・バリデーションを担当する人
・工程能力や製品品質の照査に関わる人
・医薬品業務に沿って統計を学びたい人

 

 

7.医薬品GQP/GMP解説 2023年版

品質保証部門に配属された人が、手元に置いておきたい実務的な資料です。

GQP省令、GMP省令、関連通知、GQP・GMP事例集などを、業務中に確認しやすい形でまとめています。

ただし、内容も価格も本格的であるため、製薬会社の新人全員が最初に購入する本ではありません。

まずは『ゼロから学ぶGMP 第2版』などでGMPの全体像を学び、その後、実際の業務で省令や事例集を確認する必要が出てきた段階で検討するのがおすすめです。

QAでは、社内手順や過去の運用だけで判断するのではなく、その根拠となる省令、通知、事例集まで確認する場面があります。

そのため、品質保証の実務を続けるのであれば、長く使える一冊になると思います。

こんな人におすすめ

・品質保証部門に配属された人
・GQP省令やGMP省令を確認する機会が多い人
・GMP事例集を実務で活用したい人
・社内手順の根拠を調べる必要がある人

 

新人はどの順番で読めばよい?

製薬会社の新人が、最初から専門書を何冊も読む必要はありません。

おすすめの順番は次のとおりです。

最初の1冊
『ゼロから学ぶGMP 第2版』

次に配属先に合わせて選ぶ

QC・分析部門
→『すぐ身につく 分析化学・機器分析の実務』
→『液体クロマトグラフィー』

製造・製剤部門
→『基礎から学ぶ製剤化のサイエンス 第4版』

QA
→『医薬品GQP/GMP解説 2023年版』

試験法やバリデーション担当
→『ゼロから学ぶ 分析法バリデーション』

統計やデータ評価を担当
→『ゼロから学ぶ医薬品品質統計』

まず仕事の全体像をつかみ、その後に担当業務で困ったことを本で調べる方が、知識を実務と結び付けやすくなります。

本だけですべてを理解しようとしなくてよい

製薬会社の仕事では、本に書かれている一般的な知識だけでなく、会社ごとの手順や製品ごとの特徴も理解する必要があります。

そのため、本を読んだだけで仕事ができるようになるわけではありません。

一方で、本で基礎を学んでおくと、

・なぜこの手順が必要なのか
・先輩は何を確認しているのか
・トラブル時にどこを調べればよいのか
・社内手順の背景にどのような考え方があるのか

を理解しやすくなります。

実際の業務、社内教育、先輩への質問、専門書による学習を組み合わせることが大切です。

まとめ

今回は、製薬会社の新人におすすめの本を7冊紹介しました。

製薬会社の新人全般
→『ゼロから学ぶGMP 第2版』

分析業務の基礎
→『すぐ身につく 分析化学・機器分析の実務』

HPLCの基礎と実務
→『液体クロマトグラフィー』

分析法の信頼性
→『ゼロから学ぶ 分析法バリデーション』

製剤と製造工程
→『基礎から学ぶ製剤化のサイエンス 第4版』

品質データの評価
→『ゼロから学ぶ医薬品品質統計』

QAの実務資料
→『医薬品GQP/GMP解説 2023年版』

すべてを一度に購入する必要はありません。

まずはGMPの全体像を学べる一冊と、自分の配属先に関係する一冊を選ぶのがおすすめです。

 

HPLCとは?原理・装置構成・クロマトグラムの見方を初心者向けに解説

HPLCとは?原理・装置構成・クロマトグラムの見方を初心者向けに解説

※本記事には広告(Amazonアソシエイト・楽天アフィリエイトのリンク)が含まれています。

HPLCは、医薬品、食品、環境、化学などの分野で広く使われている分析法です。

製薬会社の品質管理では日常的に使われていますが、初めて担当すると、次のような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

  • HPLCは何をしている装置なのか
  • なぜ混ざっている成分を分けられるのか
  • ポンプ、カラム、検出器にはどのような役割があるのか
  • クロマトグラムのピークから何がわかるのか
  • 保持時間やピーク面積をどう見ればよいのか

HPLCの操作は手順書どおりに進められても、原理を理解していないと、いつもと違う結果が出たときに原因を考えるのが難しくなります。

この記事では、HPLCの原理、装置構成、分析の流れ、クロマトグラムの基本的な見方を初心者向けに解説します。

HPLCとは?

HPLCは、High Performance Liquid Chromatographyの略で、日本語では一般に「高速液体クロマトグラフィー」と呼ばれます。

混合物に含まれる成分をカラムの中で分離し、検出器で測定する分析法です。

HPLCでは、次の2つを使って成分を分離します。

  • 移動相:カラムの中を流れる液体
  • 固定相:カラム内部に充填されている材料の表面

試料中の成分は、移動相に運ばれてカラム内を進みます。その途中で、固定相と相互作用します。

成分によって固定相や移動相との相互作用の強さが異なるため、カラム内を進む速さに差が生じます。この速度差を利用して、混合物を成分ごとに分けるのがHPLCです。

簡単に表すと、次のような流れです。

試料を注入する → カラムで成分を分ける → 検出器で測る → クロマトグラムとして表示する

「クロマトグラフィー」「クロマトグラフ」「クロマトグラム」の違い

似た用語ですが、意味が異なります。

用語 意味
クロマトグラフィー 成分を分離・分析する方法
クロマトグラフ クロマトグラフィーを行う装置
クロマトグラム 測定して得られたグラフ

つまり、HPLCという分析法をHPLC装置で行い、その結果としてクロマトグラムが得られます。

HPLCは何を調べるために使う?

HPLCでは、主に次の2つを調べます。

定性:何の成分かを調べる

既知の標準試料と保持時間などを比較し、どの成分である可能性が高いかを確認します。

ただし、保持時間が一致しただけで成分が完全に同一だと断定できるわけではありません。

試験の目的に応じて、標準液との比較、スペクトル情報、ピーク純度、別の分析法などを組み合わせて確認します。

定量:どのくらい含まれているかを調べる

標準液と試料液のピーク面積やピーク高さを比較し、目的成分の量や濃度を求めます。

ピーク面積が大きければ、一般には検出器に到達した成分量が多いと考えられます。しかし、ピーク面積を見ただけで濃度が直接わかるわけではありません。

標準液、検量線、希釈倍率、試料量、純度、検出器の応答などを踏まえて計算する必要があります。

HPLCで成分が分離される原理

HPLCの分離を理解するうえで重要なのは、各成分が固定相と移動相のどちらに強く引きつけられるかです。

  • 固定相との相互作用が弱い成分:移動相とともに速く進む
  • 固定相との相互作用が強い成分:カラム内に長くとどまる

その結果、成分ごとにカラムから出てくる時間が異なり、別々のピークとして検出されます。

成分の分離には、分配、吸着、イオン交換、サイズ排除など、さまざまな相互作用が利用されます。

よく使われる逆相HPLCとは?

HPLCには複数の分離モードがあります。その中でも、医薬品分析などで広く使われているのが逆相HPLCです。

逆相HPLCでは、一般に次のような組み合わせを使います。

  • 固定相:疎水性の高い充填剤
  • 移動相:水、緩衝液、メタノール、アセトニトリルなど

代表的な固定相が、シリカゲル表面にオクタデシル基を結合したC18カラムです。

逆相HPLCでは、一般に疎水性の高い成分ほど固定相との相互作用が強くなり、遅く溶出します。一方、相対的に極性の高い成分は早く溶出する傾向があります。

ただし、保持には成分の疎水性だけでなく、移動相組成、pH、成分のイオン化、カラム温度、固定相の種類なども影響します。

アイソクラティック分析とグラジエント分析

移動相の流し方には、大きく分けて2種類あります。

アイソクラティック分析

分析中、移動相の組成を一定に保つ方法です。

装置構成や分析条件が比較的わかりやすく、組成変化に伴うベースライン変動も抑えやすいという特徴があります。

グラジエント分析

分析中に移動相の組成を変化させる方法です。

保持の弱い成分から強い成分まで含まれる複雑な試料を、効率よく溶出させる場合などに使われます。

逆相HPLCでは、時間とともに有機溶媒の割合を高め、保持の強い成分をカラムから溶出させる方法がよく使われます。

グラジエント分析では、移動相のライン接続、混合、装置の遅延容量、分析終了後の再平衡化などにも注意が必要です。

HPLC装置の基本構成

HPLC装置は、主に次の部分から構成されています。

移動相容器 → 脱気装置 → ポンプ → 試料注入部 → カラム → 検出器 → 廃液

測定信号は、データ処理装置へ送られます。

構成部分 主な役割
移動相容器 カラムへ送る移動相を入れる
脱気装置 移動相中の気体を除き、気泡の発生を抑える
ポンプ 移動相を一定の流量・圧力で送る
ミキサー 複数の移動相を所定の比率で混合する
インジェクター・オートサンプラー 試料を流路へ一定量注入する
カラムオーブン カラム温度を一定に保つ
カラム 試料中の成分を分離する
検出器 カラムから溶出した成分を検出する
データ処理装置 クロマトグラムを記録・解析する

ポンプ

ポンプは、移動相を一定流量でカラムへ送ります。

流量が変化すると保持時間や分離に影響するため、安定した送液が重要です。移動相不足、気泡、漏れ、チェックバルブの不具合などがあると、送液が不安定になることがあります。

試料注入部

試料を流路へ導入する部分です。現在は、バイアルから一定量を自動注入するオートサンプラーが多く使われています。

注入量のばらつき、ニードルやシールの状態、洗浄不足、バイアル内の気泡などは、ピーク面積やキャリーオーバーに影響することがあります。

カラム

カラムは、試料成分を分離する中心的な部分です。

カラムの固定相、長さ、内径、粒子径などによって、保持、分離、分析時間、圧力が変わります。

同じC18カラムであっても、メーカーや製品によって選択性が異なる場合があります。試験法でカラムが指定されている場合は、自己判断で別のカラムへ変更してはいけません。

カラムオーブン

カラム温度を一定に保つ装置です。

温度は保持時間、分離、移動相の粘度、圧力などに影響します。設定温度だけでなく、実際に温度が安定してから分析を開始することが重要です。

検出器

カラムから出てきた成分を検出します。目的成分の性質に応じて検出器を選びます。

検出器 主な特徴
UV・可視吸光検出器 紫外線や可視光を吸収する成分を測定する
PDA検出器 複数波長の吸収スペクトル情報を取得できる
蛍光検出器 蛍光を発する成分を高感度・選択的に検出する
示差屈折率検出器 吸光を持たない糖などの測定にも使われる
電気伝導度検出器 イオン成分などの検出に使われる
質量分析計 質量情報を利用して高感度な検出や構造推定を行う

UV検出器で測定できない成分もあるため、「HPLCに注入すればすべての成分が見える」というわけではありません。

クロマトグラムの見方

クロマトグラムは、HPLCで得られた測定信号をグラフにしたものです。

  • 横軸:時間
  • 縦軸:検出器の応答

カラムから成分が溶出して検出器を通過すると、信号が変化してピークとして表示されます。

保持時間

試料を注入してからピーク頂点が現れるまでの時間を、保持時間といいます。英語ではretention timeといい、tRやRTと表記されます。

同じ試験条件であれば、標準液と試料液の保持時間を比較することで、目的成分のピークを判断する手がかりになります。

ただし、保持時間は流量、移動相組成、pH、温度、カラム、装置構成などの影響を受けます。

保持時間がずれる原因については、以下の記事で詳しく解説しています。

ピーク面積

ピークとベースラインで囲まれた範囲の面積です。

適切な測定範囲では、ピーク面積は検出器に到達した成分量に対応するため、定量計算に使われます。

ただし、濃度だけでなく、注入量、試料調製、検出波長、検出器の応答、積分条件などの影響も受けます。

ピーク面積がばらついたときは、装置だけでなく、標準液・試料液の調製や安定性、バイアル、注入操作なども確認する必要があります。

ピーク高さ

ベースラインからピーク頂点までの高さです。

定量に使われることもありますが、ピーク幅や形状の影響を受けやすいため、試験法で定められた方法に従います。

ベースライン

ピークがない部分の基準となる信号です。

ノイズ、ドリフト、段差、周期的な変動などがある場合は、移動相、気泡、温度、検出器、汚染、グラジエントなどの影響を考えます。

ピーク幅とピーク形状

良好なピークは、一般に過度な広がりや左右の偏りが少ない形状を示します。

ピークの後半が長く伸びるテーリング、前側が広がるフロンティング、ピークが広くなるブロード化などがあると、分離や定量へ影響する場合があります。

分離度

隣り合う2つのピークが、どの程度分離しているかを表す指標です。

保持時間が離れていても、ピーク幅が広ければ十分に分離できないことがあります。そのため、分離度は保持時間の差だけでなく、ピーク幅も含めて評価します。

理論段数

カラム効率を表す指標の一つです。

一般には値が大きいほど鋭いピークが得られ、カラム効率が高いことを示します。ただし、計算方法や対象ピーク、試験条件が異なる値を単純に比較することはできません。

シンメトリー係数・テーリング係数

ピーク形状の対称性を評価する指標です。

名称や計算方法は、採用する規格やデータ処理方法によって異なる場合があります。試験法や適用する公定書で定められた方法を確認します。

クロマトグラムを見るときの重要な注意点

初心者のうちは、ピークの位置と大きさだけに注目しがちです。しかし、クロマトグラムを見るときは、次の点も確認します。

  • 目的ピークの保持時間は通常と同じか
  • 目的ピークの面積や高さは妥当か
  • ピーク形状にテーリングやブロード化がないか
  • 隣接ピークと十分に分離しているか
  • 不明なピークやゴーストピークがないか
  • ベースラインに大きなノイズやドリフトがないか
  • システム適合性が規定を満たしているか
  • 標準液と試料液の注入順序や結果に不自然な点がないか

「見た目がきれいなクロマトグラム」であることと、「試験結果として適切」であることは同じではありません。

HPLC分析の基本的な流れ

実際の手順は試験法や装置によって異なりますが、一般的には次の流れで分析します。

  1. 試験法と使用する装置・カラムを確認する
  2. 移動相、標準液、試料液などを調製する
  3. 装置を立ち上げ、必要なパージや洗浄を行う
  4. カラムを接続し、移動相で平衡化する
  5. ブランク、システム適合性用溶液、標準液などを測定する
  6. システム適合性が基準を満たすことを確認する
  7. 試料液を測定する
  8. クロマトグラム、計算結果、注入順序などを確認する
  9. 定められた方法で洗浄・停止する

GMP環境では、承認された試験法、標準操作手順書、装置の使用手順に従って操作します。

初心者が誤解しやすいポイント

保持時間が一致すれば、同じ成分と断定できる?

保持時間の一致は重要な手がかりですが、それだけで成分を完全に同定できるとは限りません。

別の成分が同じ付近に溶出する可能性や、複数成分が重なっている可能性もあります。必要に応じて標準添加、スペクトル、ピーク純度、別の分析法などで確認します。

ピーク面積が2倍なら、濃度も必ず2倍?

同じ成分を同じ条件で測定し、検出器の応答が適切な範囲にあり、注入量や試料調製なども同等であれば、ピーク面積は成分量に対応します。

しかし、異なる成分同士では検出器の応答が違います。また、検量線の範囲外、検出器の飽和、注入量の違い、積分不良などがあれば単純には比較できません。

圧力が高ければ、カラムが詰まっている?

カラムの詰まりは原因の一つですが、移動相の粘度、流量、温度、配管、フィルター、バルブ、廃液ラインなども圧力へ影響します。

ピークが出なければ、試料に成分がない?

試料中に目的成分がない可能性だけでなく、調製ミス、注入不良、検出波長、送液、カラム、保持時間のずれなども考えられます。

見慣れないピークは、すべて試料由来?

前の試料のキャリーオーバー、移動相や器具の汚染、試料の劣化、装置内の汚染などによってもピークが現れることがあります。

HPLCとGCの違い

HPLCとGCは、どちらも成分を分離して測定するクロマトグラフィーですが、移動相と適する試料が異なります。

項目 HPLC GC
移動相 液体 気体
試料 溶媒に溶ける成分を広く対象にできる 揮発可能で、測定温度で安定な成分が中心
主な分離条件 移動相組成、pH、カラム、流量、温度 カラム、キャリアガス流量、温度条件
主な用途 医薬品、糖、ペプチド、有機化合物など 残留溶媒、香気成分、揮発性化合物など

どちらが優れているというものではなく、分析対象の性質と目的に応じて使い分けます。

HPLCとUHPLCの違い

UHPLCは、Ultra High Performance Liquid Chromatographyの略です。

一般に、より小さな粒子径の充填剤を用い、高い圧力に対応した装置で高速・高分離の分析を行います。

ただし、HPLCの分析条件をそのままUHPLC装置へ入力すれば同じ結果になるとは限りません。カラム寸法、粒子径、流量、注入量、配管容量、グラジエント遅延などを考慮して条件を移管する必要があります。

GMP環境でHPLCを使用するときの注意点

製薬会社の品質試験では、HPLCの技術的な理解に加えて、データの信頼性を守ることが重要です。

  • 最初に得られたクロマトグラムや結果を保存する
  • 都合のよい結果が出るまで再注入・再調製・再試験を繰り返さない
  • 積分条件を理由なく変更しない
  • 試験法や分析条件を自己判断で変更しない
  • 異常があった場合は、発生事象と確認内容を記録する
  • 再解析や再試験は、承認された手順に従う
  • 必要に応じて逸脱、OOS、OOTなどの手順に従う

HPLCで正常な数値が得られたとしても、その結果に至る操作やデータ処理が適切でなければ、信頼できる試験結果とはいえません。

HPLCを学ぶおすすめの順番

初心者の方は、次の順番で学ぶと理解しやすくなります。

  1. HPLCの分離原理を理解する
  2. 装置の各部分と役割を覚える
  3. クロマトグラムの基本用語を覚える
  4. 実際の装置と流路を確認する
  5. 正常時の保持時間、圧力、ピーク形状を把握する
  6. トラブルが起きたときに、原理へ戻って原因を考える

HPLCは、本を一度読んだだけで理解できるものではありません。実際の装置やクロマトグラムと本の説明を行き来することで、少しずつ理解が深まります。

おすすめの入門書は、以下の記事で比較しています。

原理から実際の分析までをコンパクトに学びたい方には、『液体クロマトグラフィー(分析化学実技シリーズ 機器分析編8)』も候補になります。

 

 

分析法の性能を評価する考え方を学びたい方は、分析法バリデーションの記事も参考にしてください。

まとめ

HPLCは、液体の移動相とカラム内の固定相に対する相互作用の違いを利用して、混合物を成分ごとに分離・検出する分析法です。

初心者の方は、まず次の点を押さえると理解しやすくなります。

  • 成分ごとに固定相との相互作用が異なるため、溶出する時間が変わる
  • ポンプ、試料注入部、カラム、検出器、データ処理装置が連携して分析する
  • 保持時間は成分を判断する手がかりになるが、それだけで完全には同定できない
  • ピーク面積は定量に使われるが、標準液や検量線などが必要になる
  • クロマトグラムはピーク位置と面積だけでなく、形状、分離、ベースラインも確認する
  • GMP環境では、分析結果だけでなく、操作・記録・データ処理の適切性も重要になる

HPLCの原理を理解すると、手順書の意味がわかるだけでなく、トラブルが起きたときに確認すべき場所を考えやすくなります。

HPLCの保持時間がずれる原因は?早い・遅い場合の確認ポイントを初心者向けに解説

HPLCで分析していると、

  • いつもよりピークが早く出た

  • 分析を繰り返すうちに保持時間が遅くなった

  • 同じ試料なのに保持時間が安定しない

  • 一部のピークだけがずれた

といったトラブルが起こることがあります。

保持時間のずれは、ピークの同定やシステム適合性に影響するため、原因を確認せずに分析を続けるのは好ましくありません。

ただし、原因はカラムだけとは限りません。流量、移動相の組成やpH、カラム温度、平衡化、装置の状態など、さまざまな要因が関係します。

この記事では、HPLC初心者に向けて、保持時間が早い場合・遅い場合・ばらつく場合の原因と、確認する順番をわかりやすく解説します。

HPLCの保持時間とは?

保持時間とは、試料を注入してから、成分のピークが検出されるまでの時間です。英語では retention time といい、一般に「RT」と略されます。

試料中の成分は、移動相によってカラム内を進みます。その途中で固定相と相互作用するため、成分ごとにカラム内にとどまる時間が異なります。

  • 固定相との相互作用が弱い成分:早く溶出する

  • 固定相との相互作用が強い成分:遅く溶出する

したがって、保持時間が変わったときは、成分がカラム内を進む速さや、固定相との相互作用に影響する何かが変化したと考えます。

保持時間がずれたとき、最初に整理すること

原因をやみくもに探す前に、まず「どのようにずれたか」を整理します。次の3つの視点が重要です。

1.早くなった・遅くなった・ばらつく

保持時間の変化を、次のどれかに分けます。

  • 一方向に早くなった

  • 一方向に遅くなった

  • 測定ごとに早くなったり遅くなったりする

一方向への変化とランダムな変動では、疑う原因が異なります。

2.すべてのピークか、一部のピークだけか

すべてのピークが同じ方向にずれている場合は、流量、移動相組成、温度など、分析系全体に影響する要因を疑います。

一方、一部のピークだけがずれている場合は、移動相のpH、特定成分のイオン化、カラムの選択性、試料溶媒などが関係している可能性があります。

3.急にずれたか、徐々にずれたか

移動相やカラムの交換直後に急にずれた場合は、調製・設定・取り付けの誤りなどを優先して確認します。

分析を繰り返すうちに徐々にずれる場合は、温度変化、移動相の組成変化、カラムの汚染・劣化なども考えます。

HPLCの保持時間が早くなる主な原因

原因1.流量が高い

流量が高くなると、成分がカラム内を速く進むため、一般に保持時間は短くなります。

まず、承認された試験法や分析メソッドと実際の設定値を照合します。別の分析用メソッドを呼び出していないか、流量の単位や設定を誤っていないかも確認しましょう。

ただし、画面上の設定値が正しくても、ポンプが正確に送液できているとは限りません。必要に応じて、装置メーカーの手順や社内手順書に従って送液状態を確認します。

原因2.移動相の溶出力が強い

逆相HPLCでは、一般に有機溶媒の割合が高いほど成分は早く溶出します。

例えば、次のようなケースです。

  • 水系移動相と有機溶媒の混合比を間違えた

  • 別の濃度の移動相を使用した

  • グラジエント条件や送液ラインの選択を間違えた

  • 移動相中の揮発しやすい成分が蒸発し、組成が変わった

  • オンライン混合が正しく行われていない

調製記録、試薬、使用量、容器の表示、装置のライン接続を順番に確認します。

原因3.カラム温度が高い

カラム温度が上がると、移動相の粘度や成分と固定相の相互作用が変化します。逆相HPLCでは保持時間が短くなることがよくありますが、影響の大きさや方向は化合物・分離条件によって異なります。

設定温度だけでなく、カラムオーブンが実際に設定値へ到達し、安定しているかを確認します。室温の影響を受ける条件では、分析室の温度変化も手がかりになります。

原因4.移動相のpHが変化した

酸性・塩基性の成分は、移動相のpHによってイオン化状態が変わり、保持時間が大きく変化することがあります。

特に一部のピークだけがずれた場合は、次の点を確認します。

  • pH調整前後の操作に誤りがないか

  • 指定された温度・手順でpHを測定したか

  • 緩衝液の濃度や種類が正しいか

  • pH電極の校正や状態に問題がないか

  • 調製後の時間経過や揮発により組成が変化していないか

原因調査だからといって、承認された試験法のpHを自己判断で変更してはいけません。

原因5.カラムの変化や試料の過負荷

固定相の劣化や汚染によって相互作用が弱くなると、保持時間が短くなることがあります。また、注入量や試料濃度が高すぎると、カラムが過負荷となり、ピーク形状とともに保持時間が変化する場合があります。

カラムの型式、ロット、使用履歴、保管方法、注入量、試料濃度を確認しましょう。

HPLCの保持時間が遅くなる主な原因

原因1.流量が低い

流量が低くなると、成分がカラムを通過するまでに時間がかかり、保持時間は長くなります。

設定値に誤りがない場合でも、次のような問題で実際の流量が低下することがあります。

  • ポンプ内に気泡が入っている

  • 移動相が不足している

  • 吸引フィルターが詰まっている

  • チェックバルブが正常に動作していない

  • ポンプシールや接続部から漏れがある

圧力が普段より低い、または圧力波形が不安定な場合は、送液系の問題を疑う手がかりになります。ただし、圧力が安定しているだけで流量が正しいと断定はできません。

原因2.移動相の溶出力が弱い

逆相HPLCで有機溶媒の割合が低くなると、一般に保持時間は長くなります。

手混合の場合は調製量や混合比を、装置内で混合する場合は各溶媒ライン、グラジエントプログラム、比例弁などを確認します。

移動相の調製ミスについては、こちらの記事でも解説しています。

HPLCの移動相でやりがちなミス

原因3.カラム温度が低い

温度が低下すると、成分と固定相の相互作用や移動相の粘度が変わり、保持時間が長くなることがあります。

装置立ち上げ直後、カラム交換直後、空調条件が変わったときは、温度が十分に安定しているか確認します。

原因4.カラムの平衡化が不十分

カラム内が開始時の移動相組成で十分に置き換わっていないと、保持時間が安定しません。特にグラジエント分析では、前回分析の終了条件から初期条件へ戻した後の再平衡化が重要です。

必要な平衡化時間は、カラムの大きさ、流量、分析条件、固定相によって異なります。試験法やカラム・装置メーカーの取扱説明書に従い、過去の正常時と同じ条件で十分に平衡化します。

なお、圧力の安定は平衡化を確認する一つの手がかりですが、保持時間の再現性もあわせて確認することが大切です。

原因5.カラムの汚染や固定相の変化

試料成分がカラムに蓄積すると、特定成分との相互作用が変わり、保持時間やピーク形状が変化することがあります。

洗浄や再生を行う場合は、使用可能な溶媒、洗浄方向、流量などをカラムメーカーの説明書で確認します。自己判断で逆洗したり、カラムの使用範囲を超える溶媒やpH条件を使用したりしないようにしましょう。

保持時間が早くなったり遅くなったりする原因

測定ごとに保持時間がばらつく場合は、一定方向の変化よりも「条件が安定していない」可能性を優先して考えます。

主な原因は次のとおりです。

  • ポンプの送液が不安定

  • ポンプヘッドや配管内に気泡がある

  • 移動相の脱気や混合が不十分

  • 接続部などから漏れがある

  • カラム温度や室温が変動している

  • カラムの平衡化が不十分

  • グラジエント開始条件への復帰が不十分

  • 移動相のpHや組成が時間とともに変化している

  • カラムに汚染物質が蓄積している

保持時間の変動と同時に圧力も変動している場合は、送液系の異常が疑われます。

圧力トラブルの切り分け方は、こちらの記事を参考にしてください。

HPLCで圧力が高い・上昇する原因は?初心者向けに確認ポイントを解説

「全ピーク」と「一部のピーク」で原因を分ける

保持時間のずれ方をピークごとに見ると、原因をさらに絞り込めます。

現象 優先して確認する項目
すべてのピークが同じ方向にずれる 流量、移動相組成、温度、グラジエント条件、装置設定
すべてのピークがランダムに動く 送液の不安定、気泡、漏れ、混合不良、温度変動、平衡化不足
一部のピークだけがずれる 移動相pH、特定成分のイオン化、カラム選択性、試料溶媒、カラム汚染
初期に溶出するピークだけが動く 試料溶媒、グラジエント遅延、再平衡化、注入周辺の影響

一部のピークだけがずれる場合、流量だけでは説明しにくいことがあります。例えば、pH変化はイオン化する成分に強く影響する一方、中性成分への影響が小さい場合があります。

また、試料溶媒の有機溶媒比率が移動相より高すぎると、初期に溶出するピークの保持や形状に影響することがあります。

別のHPLC装置で保持時間がずれる場合

同じメソッドを別の装置へ移したとき、保持時間が一致しないことがあります。

確認したい項目は次のとおりです。

  • 実際の流量

  • カラム温度と温度制御方式

  • 配管の内径・長さ

  • ミキサー容量

  • ポンプからカラムまでの流路容量

  • グラジエントの遅延容量(ドウェルボリューム)

  • オートサンプラーの構成

特にグラジエント分析では、設定した組成変化がカラム入口へ到達するまでの時間が装置によって異なるため、保持時間の差につながることがあります。

分析法移管や装置変更の際は、単にメソッド設定をコピーするだけでなく、装置構成の違いを確認することが重要です。

保持時間がずれたときの確認手順

初心者の方は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

手順1.試験法・メソッド・記録を照合する

流量、移動相組成、グラジエント、温度、注入量、分析時間、使用カラムが正しいか確認します。

手順2.ずれ方を分類する

「早い・遅い・ランダム」「全ピーク・一部ピーク」「急・徐々に」を整理し、正常時のクロマトグラムと重ねて比較します。

手順3.圧力と装置状態を確認する

通常時の圧力と比較し、圧力低下、脈動、漏れ、気泡、移動相残量などを確認します。

手順4.移動相を確認する

試薬、ロット、秤量・採取量、混合比、pH、調製順序、脱気、使用期限、保管状態、送液ラインを確認します。

手順5.温度と平衡化を確認する

カラムオーブンが設定温度へ到達しているか、初期条件で十分に平衡化されているかを確認します。

手順6.カラムと試料を確認する

カラムの型式、ロット、向き、使用履歴、保管状態を確認します。あわせて試料濃度、注入量、試料溶媒、試料の調製・保管状態も確認します。

手順7.原因が特定できなければ相談する

手順書で認められた範囲を超える分解・調整は行わず、経験者、装置管理者、カラムメーカーまたは装置メーカーへ相談します。

GMP環境では「とりあえず再分析」に注意する

保持時間のずれが見つかったとき、移動相を作り直したり、もう一度注入したりすれば正常に戻ることがあります。しかし、最初の結果を無視して、都合のよい結果が出るまで再分析するのは適切ではありません。

GMP環境では、次の点が重要です。

  • 最初に得られたデータを保存する

  • 発生した現象と確認内容を記録する

  • 再調製・再注入・再試験は手順書に従う

  • 試験法を自己判断で変更しない

  • システム適合性や試験結果への影響を評価する

  • 必要に応じて逸脱・OOS・OOTなどの手順に従う

保持時間のずれは、単なる装置トラブルではなく、データの信頼性やピーク同定にも関係します。原因と影響を整理してから、次の対応へ進みましょう。

保持時間のずれを防ぐための日常管理

トラブルを防ぐには、正常時の状態を記録しておくことが有効です。

  • 移動相を試験法どおりに調製・管理する

  • 移動相容器を適切に密栓し、揮発や汚染を防ぐ

  • 分析前に十分なパージと平衡化を行う

  • カラム温度が安定してから分析する

  • カラムの使用履歴と保管状態を記録する

  • 正常時の保持時間、圧力、圧力波形を残す

  • 装置の点検・消耗品交換を計画的に行う

  • 前回から変更した点を記録する

正常時の情報があれば、異常が発生したときに「何が変わったか」を比較できます。

まとめ

HPLCの保持時間がずれたときは、最初に現象を分類することが重要です。

  • 早くなった:流量増加、強い移動相、高い温度、pH変化などを確認

  • 遅くなった:流量低下、弱い移動相、低い温度、平衡化不足などを確認

  • ばらつく:送液、気泡、漏れ、混合、温度、平衡化などの不安定要因を確認

  • 全ピークがずれる:装置や分析条件など全体に影響する原因を優先

  • 一部だけずれる:pH、選択性、試料溶媒、カラム状態などを優先

原因を切り分けるときは、正常時のクロマトグラム、圧力、分析条件と比較し、直前に変更した点から確認しましょう。

HPLCの分離やトラブル対応を学びたい方へ

保持時間の変化を理解するには、移動相、固定相、pH、温度などが分離へ与える影響を体系的に学ぶことが役立ちます。

『ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)』は、液体クロマトグラフィーの分離条件をもう一歩詳しく学びたい方に向いた書籍です。

 

 

 

 

ほかの入門書も比較したい方は、こちらの記事をご覧ください。

HPLC初心者におすすめの本5選|原理・実務・トラブル対応を学べる書籍を紹介

HPLCで圧力が高い・上昇する原因は?初心者向けに確認ポイントを解説

※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。

HPLCを使用していると、

「いつもより圧力が高い」

「分析を続けるうちに圧力が上がってきた」

「上限圧力のエラーで装置が停止した」

といったトラブルが起こることがあります。

圧力が高いと、まずカラムの詰まりを疑いたくなります。しかし、原因はカラムだけとは限りません。移動相、流量、温度、配管、オートサンプラー、検出器より後の廃液ラインなど、移動相が流れる経路のさまざまな場所が関係します。

この記事では、HPLC初心者に向けて、圧力が高いときに確認したいポイントと、原因を順番に切り分ける考え方を解説します。

HPLCの「圧力」とは?

HPLCでは、ポンプで移動相を送り、カラムの中を通過させます。このとき、カラムや配管が移動相の流れに抵抗するため、装置には圧力がかかります。

したがって、圧力がかかること自体は異常ではありません。

圧力は、主に次のような条件で変化します。

  • 流量

  • 移動相の粘度や組成

  • カラムの長さ、内径、充填剤の粒子径

  • カラム温度

  • 配管の内径や長さ

  • カラムや流路の詰まり

重要なのは、圧力の絶対値だけで異常と判断しないことです。

同じ装置、同じカラム、同じ移動相、同じ流量、同じ温度で測定したときに、通常より高いかを確認します。グラジエント分析では、移動相組成の変化に伴って圧力が変化することもあるため、同じメソッドの過去データと比較することが大切です。

圧力が高いときに、まず確認すること

いきなり配管を外す前に、まず分析条件と発生状況を確認します。

1.いつから高くなったか

次のどのパターンかを確認しましょう。

  • 分析開始直後から高い

  • 移動相やカラムを交換してから高い

  • 試料を注入した後に高くなった

  • 分析を繰り返すうちに徐々に上昇した

  • グラジエントの特定の時間帯だけ高い

発生したタイミングは、原因を絞る大きな手がかりになります。

例えば、移動相の交換直後から圧力が高い場合は、組成や調製の誤り、塩の析出などを疑います。一方、試料を繰り返し注入するにつれて上昇する場合は、試料中の微粒子やマトリックス成分がカラム入口などに蓄積している可能性があります。

2.前回と分析条件が同じか

次の点を、試験法やメソッド、調製記録と照合します。

  • 流量を高く設定していないか

  • 移動相の種類や混合比に誤りがないか

  • カラムの型式、長さ、内径、粒子径が同じか

  • カラム温度が設定値に到達しているか

  • グラジエント条件が正しいか

  • 使用している装置や流路が同じか

流量が高いほど、一般に圧力は高くなります。また、粘度の高い移動相や、粒子径が小さいカラムを使用すると、圧力は上昇しやすくなります。

3.通常時の圧力と圧力波形を比較する

「高い気がする」ではなく、同じ条件での通常値と比較します。

可能であれば、次の情報を残しておくと原因調査に役立ちます。

  • 分析開始時の圧力

  • 平衡化後の圧力

  • 圧力が上昇し始めた時刻または注入回数

  • 圧力波形

  • 直前に行った作業

  • 使用したカラム、移動相、試料

圧力が一定に高いのか、徐々に上がるのか、大きく変動するのかでも疑う原因が変わります。

HPLCで圧力が高くなる主な原因

原因1.流量が高い

まず確認したいのが、メソッドの流量です。

誤って通常より高い流量を設定していたり、別のカラム用のメソッドを使用していたりすると、圧力が高くなります。

装置を動かす前に、試験法や承認済みメソッドと流量が一致しているか確認しましょう。圧力を下げるために流量を変更すると保持時間や分離に影響するため、規定された試験法を自己判断で変更してはいけません。

原因2.移動相の粘度が高い

移動相の種類や組成によって粘度が異なり、粘度が高いほど圧力も高くなりやすくなります。

例えば、次のような場合です。

  • 有機溶媒と水の混合比が誤っている

  • 本来と異なる有機溶媒を使用した

  • グラジエントにより、粘度の高い組成になった

  • カラム温度が通常より低い

グラジエント分析で圧力が一定のパターンに沿って変化し、過去の分析でも同様であれば、必ずしも異常とは限りません。

原因3.移動相中で塩などが析出した

緩衝液と高濃度の有機溶媒が混ざると、塩が析出することがあります。析出物が配管、フィルター、バルブ、カラム入口などを塞ぐと、圧力が急に上昇する原因になります。

移動相を切り替える際は、溶媒同士の混和性や塩の溶解性を確認し、必要に応じて中間洗浄を行います。ただし、洗浄溶媒や洗浄順序は、装置・カラムの取扱説明書等に従ってください。

原因4.カラム入口のフィルターが詰まった

カラム入口には、充填剤が流出しないようにフィルター(フリット)があります。試料や移動相に含まれる微粒子がここに蓄積すると、圧力が徐々に上がることがあります。

特に、次のような場合は注意が必要です。

  • 試料に溶け残りや微粒子がある

  • 試料マトリックスが複雑である

  • 移動相のろ過や管理が不十分である

  • 多数の試料を連続して注入した

  • カラムを長期間使用している

ガードカラムを使用している場合は、分析カラムより先にガードカラムが詰まっている可能性もあります。

原因5.試料成分がカラムに蓄積した

試料中の成分がカラムに強く保持されたり、溶けにくい成分が析出したりすると、使用を重ねるうちに圧力が上昇することがあります。

移動相だけでは圧力が上昇せず、試料やブランクを注入した後に上昇する場合は、注入操作や試料に由来する可能性を考えます。

カラム洗浄を行う場合は、カラムメーカーが示す洗浄方法と使用可能な溶媒を確認します。カラムを逆向きに接続して洗浄できるかどうかも製品によって異なるため、自己判断で逆洗しないことが重要です。

原因6.配管、フィルター、バルブなどが詰まった

圧力上昇の原因はカラム以外にもあります。

  • ポンプ出口側のフィルター

  • インジェクターのニードルやニードルシート

  • サンプルループ

  • インジェクションバルブ

  • カラム前後の配管

  • 検出器のフローセル

  • 廃液チューブ

配管が折れている、押しつぶされている、接続部を締めすぎているといった物理的な問題でも流路抵抗が大きくなることがあります。

原因7.カラム温度が低い、または安定していない

一般に、温度が低いと移動相の粘度が高くなり、圧力も高くなりやすくなります。

カラムオーブンを使用するメソッドでは、設定温度だけでなく、実際に温度が到達・安定しているかを確認します。装置を立ち上げた直後だけ圧力が高く、温度が安定すると下がる場合は、温度の影響が考えられます。

「急に上がった」と「徐々に上がった」で原因を考える

圧力の上がり方を整理すると、原因を絞りやすくなります。

急に圧力が上がった場合

次のような原因を疑います。

  • 流量や移動相組成などの設定ミス

  • 塩や試料成分の析出

  • 配管の折れや閉塞

  • カラムやガードカラムの交換・接続に伴う問題

  • バルブや流路の閉塞

直前に行った変更や作業を確認することが重要です。

徐々に圧力が上がった場合

次のような原因を疑います。

  • 試料中の微粒子がカラム入口に蓄積した

  • 試料マトリックスがカラムに蓄積した

  • 移動相や装置流路が汚染された

  • 微生物汚染が生じた

  • ガードカラムやインラインフィルターが詰まった

「何検体目から上がり始めたか」「移動相だけを送液しても上がるか」といった情報が切り分けに役立ちます。

カラムを外して原因を切り分ける考え方

分析条件に問題が見つからない場合は、流路のどこで抵抗が大きくなっているかを切り分けます。

基本的な考え方は次のとおりです。

  1. 装置を停止し、圧力が十分に下がったことを確認する

  2. 手順書に従ってカラムを外し、必要に応じてユニオンで配管を接続する

  3. 指定された条件で送液し、圧力を確認する

  4. 圧力が大きく下がれば、カラムまたはガードカラム側を疑う

  5. 圧力が高いままであれば、カラム以外の装置流路を疑う

ガードカラムを使用している場合は、ガードカラムと分析カラムを分けて確認すると、どちらが原因かをさらに絞り込めます。

カラムを外しても圧力が高い場合は、ポンプ、オートサンプラー、配管、検出器、廃液ラインなどを、装置メーカーの手順に従って順番に確認します。

なお、高圧がかかった状態で配管を緩めるのは危険です。保護具を着用し、必ず装置を停止して除圧したうえで、取扱説明書や社内SOPに従って作業してください。装置内部の分解や部品交換は、教育を受けた担当者またはメーカーサービスに依頼します。

圧力上昇を防ぐための日常管理

圧力トラブルを完全に防ぐことはできませんが、日常管理でリスクを下げられます。

  • 移動相を正しい組成で調製する

  • 使用する溶媒や緩衝液の混和性、塩の溶解性を確認する

  • 必要な場合は移動相や試料を適切にろ過する

  • 試料に溶け残りや析出がないことを確認する

  • カラムの使用可能圧力、温度、pH、溶媒を守る

  • カラムに適した洗浄と保管を行う

  • 通常時の圧力と圧力波形を記録する

  • 配管の折れ、つぶれ、締めすぎを避ける

  • 装置メーカーが定める保守点検を行う

特に、正常時の圧力を把握しておくことが重要です。正常値がわからなければ、異常の早期発見も難しくなります。

まとめ

HPLCの圧力が高いときは、カラムの詰まりだけでなく、分析条件、移動相、温度、配管、バルブ、検出器より後の流路なども確認する必要があります。

初心者の方は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 同じ分析条件で通常より高いかを確認する

  2. 急に上がったか、徐々に上がったかを確認する

  3. 直前に変更した操作、移動相、カラム、試料を確認する

  4. カラムを外したときに圧力が下がるかを確認する

  5. 下がらなければ、装置流路を順番に切り分ける

圧力トラブルでは、思いついた部品を次々に交換するよりも、発生状況を記録し、流路を一つずつ切り分ける方が原因に早く近づけます。

HPLCのトラブル対応や日常操作を体系的に学びたい方には、『液クロを上手につかうコツ―誰も教えてくれないノウハウ―』が向いています。移動相の調製、装置やカラムの扱い、トラブル対応など、実務で疑問になりやすいポイントを確認できる本です。

 

 

ほかの入門書も比較したい方は、次の記事も参考にしてください。

HPLC初心者におすすめの本5選

 

 

HPLC初心者におすすめの本5選

HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を仕事で使うことになったものの、

「何から勉強すればいいのかわからない」

「HPLCの本はたくさんあるけれど、どれを読めばいい?」

と感じる方も多いのではないでしょうか。

HPLCは、実際に装置を操作するだけなら手順書に沿って進めることもできます。

しかし、

● なぜこの移動相を使うのか

● なぜピークが分離するのか

● なぜ圧力が上昇するのか

● なぜゴーストピークが出るのか

● システム適合性をなぜ確認するのか

といったことを理解しようとすると、原理や装置についての基礎知識が必要になります。

特に製薬会社などで分析業務に携わる場合、「測定できる」だけでなく、異常が起きたときに原因を考えられることが重要です。

そこで今回は、HPLCをこれから勉強する人から、実際に分析業務を担当している人まで役立つ本を5冊紹介します。

1.液体クロマトグラフィーを使いこなす―その基礎と計算力―

最初におすすめしたいのが、

『液体クロマトグラフィーを使いこなす―その基礎と計算力―』

です。

HPLCを単に操作するのではなく、クロマトグラフィーの原理から理解したい人に向いています。

HPLCを始めたばかりのころは、

「保持時間」
「理論段数」
「分離度」
「保持係数」

など、聞き慣れない言葉が一気に出てきます。

これらを丸暗記するよりも、クロマトグラフィーで何が起きているのかを理解しておくと、その後の実務がかなりわかりやすくなります。

特に、

「HPLCを使っているけれど、原理をうまく説明できない」

という人が基礎を整理するのに適した一冊です。

 

 

こんな人におすすめ

● 初めてHPLCを担当する人

● クロマトグラフィーの原理から勉強したい人

● 理論段数や分離度などの意味を理解したい人

 

2.液クロ虎の巻―誰にも聞けなかったHPLC Q&A―

次におすすめなのが、

『液クロ虎の巻―誰にも聞けなかったHPLC Q&A―』

です。

日本分析化学会の液体クロマトグラフィー研究懇談会による書籍で、HPLCについての疑問をQ&A形式で解説しています。

内容は、

● HPLCの基礎と理論

● カラム

● 移動相

● 検出・定量

● データ処理

● HPLC装置

● 前処理

など幅広く、実際にHPLCを使用していると疑問に感じやすいポイントが扱われています。

HPLCでは、教科書を最初から最後まで読むより、

「これってなぜ?」

と思ったタイミングで調べることで理解が深まることもあります。

その意味で、手元に置いておいて辞書のように使える本です。

少し古い本ではありますが、クロマトグラフィーの基本的な考え方を理解するという点では現在でも参考になります。

 

こんな人におすすめ

● HPLCを実際に操作し始めた人

● 日々の分析で生じる疑問を解決したい人

● 手元に置いて必要なところだけ調べたい人

 

3.液クロを上手につかうコツ―誰も教えてくれないノウハウ―

HPLCの基本操作を覚えてきたら、

『液クロを上手につかうコツ―誰も教えてくれないノウハウ―』

もおすすめです。

HPLCでは、手順書だけではなかなか身につかない「ちょっとしたコツ」があります。

例えば、

● 移動相の調製

● カラムの取り扱い

● 装置の扱い

● 分析条件の考え方

● トラブルへの対応

などです。

実務では、このような知識の差が分析の安定性に影響することがあります。

先輩から経験的に教えてもらうことも多い部分ですが、それらを体系的に学べるのがこの本の良いところです。

HPLCの原理を学ぶための一冊というより、

「実際にHPLCを使うようになってから読む本」

という位置付けがおすすめです。

こんな人におすすめ

● HPLCを日常的に使用している人

● 基本操作はできるようになった人

● 実務上のノウハウを身につけたい人

 

4.ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)

HPLCをある程度使えるようになると、

「どうしてこのピークは分離しないのだろう?」

という問題にぶつかります。

そこで役立つのが、

『ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)』

です。

HPLCの大きな目的の一つは、目的成分と他の成分を適切に分離することです。

そのためには、

● カラム

● 移動相

● pH

● 有機溶媒

● 温度

● 流量

など、さまざまな要素を考える必要があります。

試験法どおりに測定するだけの段階から一歩進んで、

「なぜこの分析条件なのか」

を考えられるようになるために役立ちます。

特に、試験法の検討や分析条件の変更、分析トラブルの原因調査などに関わるようになった人には参考になると思います。

 

 

 

 

こんな人におすすめ

● ピーク分離について詳しく学びたい人

● 分析条件を検討する機会がある人

● HPLCをもう一段深く理解したい人

 

5.ゼロから学ぶ分析法バリデーション

製薬会社でHPLCを使用するのであれば、

『ゼロから学ぶ分析法バリデーション』

もおすすめです。

HPLCそのものの入門書ではありませんが、製薬会社の分析業務では、

「HPLCで測定できる」ことと「その分析法が目的に適していることを証明する」ことは別の話

です。

分析法バリデーションでは、

● 真度

● 精度

● 特異性

● 直線性

● 範囲

● 検出限界

● 定量限界

などを評価します。

HPLCの操作を覚えたあとにこの考え方を学ぶことで、

「なぜこの試験を行っているのか」

「なぜこの条件で適否を判断しているのか」

という分析業務全体への理解が深まります。

製薬会社のQCや研究開発などで分析を担当する人には、特におすすめしたい一冊です。

 

こんな人におすすめ

● 製薬会社で分析業務を担当する人

● HPLCの操作から一歩進んで分析法について学びたい人

● 分析法バリデーションを初めて担当する人

 

HPLC初心者ならどの順番で読む?

5冊すべてを最初から読む必要はありません。

これからHPLCを始める人なら、

①液体クロマトグラフィーを使いこなす
↓
②液クロ虎の巻
↓
実際にHPLCを操作
↓
③液クロを上手につかうコツ

という流れがおすすめです。

さらに業務内容に応じて、

分析条件や分離を考えるなら
→ ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)

製薬会社で分析法そのものを理解したいなら
→ ゼロから学ぶ分析法バリデーション

へ進むとよいと思います。

本だけでなく、実際のクロマトグラムを見ることも大切

HPLCは本を読むだけですべて理解できるものではありません。

実際に分析を行いながら、

「なぜこのピークが出たのか」

「なぜ保持時間が変わったのか」

「なぜ圧力が上がったのか」

と考え、本で確認することを繰り返すことで理解が深まります。

特にトラブルが起こったときは、HPLCを理解する良い機会でもあります。

このブログでも、HPLCについていくつか記事を書いています。

● HPLCとは?原理を簡単に解説

● HPLCでのゴーストピーク|原因と対策

● HPLCトラブル|ピークが検出されない原因

● HPLCやりがちミス|移動相編

本で基礎を学びながら、こちらも参考にしていただければと思います。

まとめ

今回は、HPLC初心者におすすめの本を5冊紹介しました。

まず原理を理解するなら
『液体クロマトグラフィーを使いこなす』

幅広い疑問を調べるなら
『液クロ虎の巻』

実務上のノウハウを学ぶなら
『液クロを上手につかうコツ』

分離について深く学ぶなら
『ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)』

製薬会社の分析業務まで理解するなら
『ゼロから学ぶ分析法バリデーション』

がおすすめです。

HPLCは、最初は難しい用語が多く取っつきにくく感じます。

しかし、原理と実際の分析を結びつけて理解していくと、トラブルが起きたときにも「何を確認すればいいのか」を考えられるようになります。

これからHPLCを担当する方は、まず自分のレベルや業務内容に合った一冊から始めてみてください。

英語の瞬発力をつける9マス英作文トレーニング◇読書記録

英語の瞬発力をつける9マス英作文トレーニング (サイエンス・アイ新書)

英語を勉強していると、「単語はわかるのに、文章がうまく作れない」という壁にぶつかることはありませんか?この本は、英文の基本構造を9つのマスに分けるというユニークな方法で、英作文の力を着実に育ててくれます。

■ 英文を「9つのマス」に分けて考える新発想

本書の最大の特徴は、英文を主語・動詞・目的語・補語などの文要素に分けて、9マスの表の中に当てはめながら構文を組み立てていくところです。見た目はまるでパズルのようですが、やってみると驚くほど文の構造が見えてきます。

文法書では見慣れたS(主語)、V(動詞)、O(目的語)などの概念も、この9マスに配置することで視覚的に理解しやすくなります。英文を「丸ごと暗記」ではなく、「構造で理解して自分の言葉で組み立てる」ことができるようになるのが、このトレーニングの強みです。

■ 初級者でも取り組みやすいステップ構成

内容は段階的に構成されており、be動詞の文→一般動詞→助動詞→時制の変化→疑問文や否定文と、少しずつ難易度が上がっていきます。

最初は「こんなに分解して意味があるのかな?」と思ったのですが、マスを埋めながら文章を作る作業を繰り返すうちに、自然と語順や文型のルールが身についていくのを実感しました。

特にありがたかったのは、日本語の例文があらかじめ用意されており、それを英語に変換するプロセスを通してアウトプット練習ができる点です。やみくもに書くだけでなく、「何をどこに置くか」を意識しながら練習できるので、英作文の精度も上がります。

■ 「とにかく書く」に頼らない学習スタイル

英作文というと、「とにかくたくさん書いて慣れる」スタイルが多い中で、この本は構造から理解することを重視しています。英語が得意ではない人や、これから英語を基礎からやり直したい人にとっては、感覚に頼らずしっかりルールで組み立てられるこの方法はとても心強いと感じました。

書いて覚えるのではなく、仕組みを理解しながら書く。だからこそ、応用力も自然と育っていきます。


■ まとめ:英文が「組み立てられる」ようになる感覚

英文が「覚えるもの」から「自分で作れるもの」に変わっていく感覚は、ちょっとした快感すらありました。

パズル感覚で英文の骨組みを見抜く練習ができるので、英文法の再確認をしたい方や、英検・TOEICなどの基礎力を固めたい方にもおすすめです。

地道だけど確実に「英語がわかる・書ける」力を育ててくれる一冊。英文がうまく作れないと感じている方は、ぜひ試してみてください。きっと今までと違う視点で英語が見えてくるはずです。

 

「好き」を言語化する技術◇読書記録

「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない (ディスカヴァー携書)

 

『「好き」を言語化する技術』──自分の「好き」をもっと伝えたいあなたへ

『「好き」を言語化する技術』は、自分の「推し」や「お気に入り」について、もっと的確に、もっと熱く語りたいと願うすべての人に向けた一冊です。「やばい!」「最高!」だけでは伝えきれない、その情熱や魅力を、どう言葉に乗せて届けるか。本書は、その具体的な方法とヒントを教えてくれます。​

■ 「好き」を伝える難しさ

私たちは日常的に、映画、音楽、書籍、アートなど、さまざまなものに心を動かされます。しかし、その感動や興奮を他人に伝えようとすると、「なんかすごく良かった!」といった曖昧な表現になりがちです。本書では、そうした「言葉にできないもどかしさ」を解消し、自分の「好き」を的確に、そして魅力的に伝えるための技術を紹介しています。​

■ 言語化のテクニックと実践方法

三宅さんは、具体的なフレームワークや例を挙げながら、感情や感想を言語化する方法を解説しています。​たとえば、五感を使った描写、比喩の活用、具体的なエピソードを交えた説明など、読者がすぐに実践できるテクニックが満載です。​これらの方法を取り入れることで、単なる感想が、相手に響くメッセージへと変わります。

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『「好き」を言語化する技術』は、自分の情熱や感動を、より深く、より鮮明に伝えたいと願うすべての人におすすめの一冊です。​言葉の力で「好き」を共有し、その輪を広げていく楽しさを、ぜひこの本を通じて感じてみてください。

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