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HPLCの保持時間がずれる原因は?早い・遅い場合の確認ポイントを初心者向けに解説

HPLCで分析していると、

  • いつもよりピークが早く出た

  • 分析を繰り返すうちに保持時間が遅くなった

  • 同じ試料なのに保持時間が安定しない

  • 一部のピークだけがずれた

といったトラブルが起こることがあります。

保持時間のずれは、ピークの同定やシステム適合性に影響するため、原因を確認せずに分析を続けるのは好ましくありません。

ただし、原因はカラムだけとは限りません。流量、移動相の組成やpH、カラム温度、平衡化、装置の状態など、さまざまな要因が関係します。

この記事では、HPLC初心者に向けて、保持時間が早い場合・遅い場合・ばらつく場合の原因と、確認する順番をわかりやすく解説します。

HPLCの保持時間とは?

保持時間とは、試料を注入してから、成分のピークが検出されるまでの時間です。英語では retention time といい、一般に「RT」と略されます。

試料中の成分は、移動相によってカラム内を進みます。その途中で固定相と相互作用するため、成分ごとにカラム内にとどまる時間が異なります。

  • 固定相との相互作用が弱い成分:早く溶出する

  • 固定相との相互作用が強い成分:遅く溶出する

したがって、保持時間が変わったときは、成分がカラム内を進む速さや、固定相との相互作用に影響する何かが変化したと考えます。

保持時間がずれたとき、最初に整理すること

原因をやみくもに探す前に、まず「どのようにずれたか」を整理します。次の3つの視点が重要です。

1.早くなった・遅くなった・ばらつく

保持時間の変化を、次のどれかに分けます。

  • 一方向に早くなった

  • 一方向に遅くなった

  • 測定ごとに早くなったり遅くなったりする

一方向への変化とランダムな変動では、疑う原因が異なります。

2.すべてのピークか、一部のピークだけか

すべてのピークが同じ方向にずれている場合は、流量、移動相組成、温度など、分析系全体に影響する要因を疑います。

一方、一部のピークだけがずれている場合は、移動相のpH、特定成分のイオン化、カラムの選択性、試料溶媒などが関係している可能性があります。

3.急にずれたか、徐々にずれたか

移動相やカラムの交換直後に急にずれた場合は、調製・設定・取り付けの誤りなどを優先して確認します。

分析を繰り返すうちに徐々にずれる場合は、温度変化、移動相の組成変化、カラムの汚染・劣化なども考えます。

HPLCの保持時間が早くなる主な原因

原因1.流量が高い

流量が高くなると、成分がカラム内を速く進むため、一般に保持時間は短くなります。

まず、承認された試験法や分析メソッドと実際の設定値を照合します。別の分析用メソッドを呼び出していないか、流量の単位や設定を誤っていないかも確認しましょう。

ただし、画面上の設定値が正しくても、ポンプが正確に送液できているとは限りません。必要に応じて、装置メーカーの手順や社内手順書に従って送液状態を確認します。

原因2.移動相の溶出力が強い

逆相HPLCでは、一般に有機溶媒の割合が高いほど成分は早く溶出します。

例えば、次のようなケースです。

  • 水系移動相と有機溶媒の混合比を間違えた

  • 別の濃度の移動相を使用した

  • グラジエント条件や送液ラインの選択を間違えた

  • 移動相中の揮発しやすい成分が蒸発し、組成が変わった

  • オンライン混合が正しく行われていない

調製記録、試薬、使用量、容器の表示、装置のライン接続を順番に確認します。

原因3.カラム温度が高い

カラム温度が上がると、移動相の粘度や成分と固定相の相互作用が変化します。逆相HPLCでは保持時間が短くなることがよくありますが、影響の大きさや方向は化合物・分離条件によって異なります。

設定温度だけでなく、カラムオーブンが実際に設定値へ到達し、安定しているかを確認します。室温の影響を受ける条件では、分析室の温度変化も手がかりになります。

原因4.移動相のpHが変化した

酸性・塩基性の成分は、移動相のpHによってイオン化状態が変わり、保持時間が大きく変化することがあります。

特に一部のピークだけがずれた場合は、次の点を確認します。

  • pH調整前後の操作に誤りがないか

  • 指定された温度・手順でpHを測定したか

  • 緩衝液の濃度や種類が正しいか

  • pH電極の校正や状態に問題がないか

  • 調製後の時間経過や揮発により組成が変化していないか

原因調査だからといって、承認された試験法のpHを自己判断で変更してはいけません。

原因5.カラムの変化や試料の過負荷

固定相の劣化や汚染によって相互作用が弱くなると、保持時間が短くなることがあります。また、注入量や試料濃度が高すぎると、カラムが過負荷となり、ピーク形状とともに保持時間が変化する場合があります。

カラムの型式、ロット、使用履歴、保管方法、注入量、試料濃度を確認しましょう。

HPLCの保持時間が遅くなる主な原因

原因1.流量が低い

流量が低くなると、成分がカラムを通過するまでに時間がかかり、保持時間は長くなります。

設定値に誤りがない場合でも、次のような問題で実際の流量が低下することがあります。

  • ポンプ内に気泡が入っている

  • 移動相が不足している

  • 吸引フィルターが詰まっている

  • チェックバルブが正常に動作していない

  • ポンプシールや接続部から漏れがある

圧力が普段より低い、または圧力波形が不安定な場合は、送液系の問題を疑う手がかりになります。ただし、圧力が安定しているだけで流量が正しいと断定はできません。

原因2.移動相の溶出力が弱い

逆相HPLCで有機溶媒の割合が低くなると、一般に保持時間は長くなります。

手混合の場合は調製量や混合比を、装置内で混合する場合は各溶媒ライン、グラジエントプログラム、比例弁などを確認します。

移動相の調製ミスについては、こちらの記事でも解説しています。

HPLCの移動相でやりがちなミス

原因3.カラム温度が低い

温度が低下すると、成分と固定相の相互作用や移動相の粘度が変わり、保持時間が長くなることがあります。

装置立ち上げ直後、カラム交換直後、空調条件が変わったときは、温度が十分に安定しているか確認します。

原因4.カラムの平衡化が不十分

カラム内が開始時の移動相組成で十分に置き換わっていないと、保持時間が安定しません。特にグラジエント分析では、前回分析の終了条件から初期条件へ戻した後の再平衡化が重要です。

必要な平衡化時間は、カラムの大きさ、流量、分析条件、固定相によって異なります。試験法やカラム・装置メーカーの取扱説明書に従い、過去の正常時と同じ条件で十分に平衡化します。

なお、圧力の安定は平衡化を確認する一つの手がかりですが、保持時間の再現性もあわせて確認することが大切です。

原因5.カラムの汚染や固定相の変化

試料成分がカラムに蓄積すると、特定成分との相互作用が変わり、保持時間やピーク形状が変化することがあります。

洗浄や再生を行う場合は、使用可能な溶媒、洗浄方向、流量などをカラムメーカーの説明書で確認します。自己判断で逆洗したり、カラムの使用範囲を超える溶媒やpH条件を使用したりしないようにしましょう。

保持時間が早くなったり遅くなったりする原因

測定ごとに保持時間がばらつく場合は、一定方向の変化よりも「条件が安定していない」可能性を優先して考えます。

主な原因は次のとおりです。

  • ポンプの送液が不安定

  • ポンプヘッドや配管内に気泡がある

  • 移動相の脱気や混合が不十分

  • 接続部などから漏れがある

  • カラム温度や室温が変動している

  • カラムの平衡化が不十分

  • グラジエント開始条件への復帰が不十分

  • 移動相のpHや組成が時間とともに変化している

  • カラムに汚染物質が蓄積している

保持時間の変動と同時に圧力も変動している場合は、送液系の異常が疑われます。

圧力トラブルの切り分け方は、こちらの記事を参考にしてください。

HPLCで圧力が高い・上昇する原因は?初心者向けに確認ポイントを解説

「全ピーク」と「一部のピーク」で原因を分ける

保持時間のずれ方をピークごとに見ると、原因をさらに絞り込めます。

現象 優先して確認する項目
すべてのピークが同じ方向にずれる 流量、移動相組成、温度、グラジエント条件、装置設定
すべてのピークがランダムに動く 送液の不安定、気泡、漏れ、混合不良、温度変動、平衡化不足
一部のピークだけがずれる 移動相pH、特定成分のイオン化、カラム選択性、試料溶媒、カラム汚染
初期に溶出するピークだけが動く 試料溶媒、グラジエント遅延、再平衡化、注入周辺の影響

一部のピークだけがずれる場合、流量だけでは説明しにくいことがあります。例えば、pH変化はイオン化する成分に強く影響する一方、中性成分への影響が小さい場合があります。

また、試料溶媒の有機溶媒比率が移動相より高すぎると、初期に溶出するピークの保持や形状に影響することがあります。

別のHPLC装置で保持時間がずれる場合

同じメソッドを別の装置へ移したとき、保持時間が一致しないことがあります。

確認したい項目は次のとおりです。

  • 実際の流量

  • カラム温度と温度制御方式

  • 配管の内径・長さ

  • ミキサー容量

  • ポンプからカラムまでの流路容量

  • グラジエントの遅延容量(ドウェルボリューム)

  • オートサンプラーの構成

特にグラジエント分析では、設定した組成変化がカラム入口へ到達するまでの時間が装置によって異なるため、保持時間の差につながることがあります。

分析法移管や装置変更の際は、単にメソッド設定をコピーするだけでなく、装置構成の違いを確認することが重要です。

保持時間がずれたときの確認手順

初心者の方は、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

手順1.試験法・メソッド・記録を照合する

流量、移動相組成、グラジエント、温度、注入量、分析時間、使用カラムが正しいか確認します。

手順2.ずれ方を分類する

「早い・遅い・ランダム」「全ピーク・一部ピーク」「急・徐々に」を整理し、正常時のクロマトグラムと重ねて比較します。

手順3.圧力と装置状態を確認する

通常時の圧力と比較し、圧力低下、脈動、漏れ、気泡、移動相残量などを確認します。

手順4.移動相を確認する

試薬、ロット、秤量・採取量、混合比、pH、調製順序、脱気、使用期限、保管状態、送液ラインを確認します。

手順5.温度と平衡化を確認する

カラムオーブンが設定温度へ到達しているか、初期条件で十分に平衡化されているかを確認します。

手順6.カラムと試料を確認する

カラムの型式、ロット、向き、使用履歴、保管状態を確認します。あわせて試料濃度、注入量、試料溶媒、試料の調製・保管状態も確認します。

手順7.原因が特定できなければ相談する

手順書で認められた範囲を超える分解・調整は行わず、経験者、装置管理者、カラムメーカーまたは装置メーカーへ相談します。

GMP環境では「とりあえず再分析」に注意する

保持時間のずれが見つかったとき、移動相を作り直したり、もう一度注入したりすれば正常に戻ることがあります。しかし、最初の結果を無視して、都合のよい結果が出るまで再分析するのは適切ではありません。

GMP環境では、次の点が重要です。

  • 最初に得られたデータを保存する

  • 発生した現象と確認内容を記録する

  • 再調製・再注入・再試験は手順書に従う

  • 試験法を自己判断で変更しない

  • システム適合性や試験結果への影響を評価する

  • 必要に応じて逸脱・OOS・OOTなどの手順に従う

保持時間のずれは、単なる装置トラブルではなく、データの信頼性やピーク同定にも関係します。原因と影響を整理してから、次の対応へ進みましょう。

保持時間のずれを防ぐための日常管理

トラブルを防ぐには、正常時の状態を記録しておくことが有効です。

  • 移動相を試験法どおりに調製・管理する

  • 移動相容器を適切に密栓し、揮発や汚染を防ぐ

  • 分析前に十分なパージと平衡化を行う

  • カラム温度が安定してから分析する

  • カラムの使用履歴と保管状態を記録する

  • 正常時の保持時間、圧力、圧力波形を残す

  • 装置の点検・消耗品交換を計画的に行う

  • 前回から変更した点を記録する

正常時の情報があれば、異常が発生したときに「何が変わったか」を比較できます。

まとめ

HPLCの保持時間がずれたときは、最初に現象を分類することが重要です。

  • 早くなった:流量増加、強い移動相、高い温度、pH変化などを確認

  • 遅くなった:流量低下、弱い移動相、低い温度、平衡化不足などを確認

  • ばらつく:送液、気泡、漏れ、混合、温度、平衡化などの不安定要因を確認

  • 全ピークがずれる:装置や分析条件など全体に影響する原因を優先

  • 一部だけずれる:pH、選択性、試料溶媒、カラム状態などを優先

原因を切り分けるときは、正常時のクロマトグラム、圧力、分析条件と比較し、直前に変更した点から確認しましょう。

HPLCの分離やトラブル対応を学びたい方へ

保持時間の変化を理解するには、移動相、固定相、pH、温度などが分離へ与える影響を体系的に学ぶことが役立ちます。

『ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)』は、液体クロマトグラフィーの分離条件をもう一歩詳しく学びたい方に向いた書籍です。

 

 

 

 

ほかの入門書も比較したい方は、こちらの記事をご覧ください。

HPLC初心者におすすめの本5選|原理・実務・トラブル対応を学べる書籍を紹介

HPLCで圧力が高い・上昇する原因は?初心者向けに確認ポイントを解説

※本記事にはアフィリエイトリンクを含みます。

HPLCを使用していると、

「いつもより圧力が高い」

「分析を続けるうちに圧力が上がってきた」

「上限圧力のエラーで装置が停止した」

といったトラブルが起こることがあります。

圧力が高いと、まずカラムの詰まりを疑いたくなります。しかし、原因はカラムだけとは限りません。移動相、流量、温度、配管、オートサンプラー、検出器より後の廃液ラインなど、移動相が流れる経路のさまざまな場所が関係します。

この記事では、HPLC初心者に向けて、圧力が高いときに確認したいポイントと、原因を順番に切り分ける考え方を解説します。

HPLCの「圧力」とは?

HPLCでは、ポンプで移動相を送り、カラムの中を通過させます。このとき、カラムや配管が移動相の流れに抵抗するため、装置には圧力がかかります。

したがって、圧力がかかること自体は異常ではありません。

圧力は、主に次のような条件で変化します。

  • 流量

  • 移動相の粘度や組成

  • カラムの長さ、内径、充填剤の粒子径

  • カラム温度

  • 配管の内径や長さ

  • カラムや流路の詰まり

重要なのは、圧力の絶対値だけで異常と判断しないことです。

同じ装置、同じカラム、同じ移動相、同じ流量、同じ温度で測定したときに、通常より高いかを確認します。グラジエント分析では、移動相組成の変化に伴って圧力が変化することもあるため、同じメソッドの過去データと比較することが大切です。

圧力が高いときに、まず確認すること

いきなり配管を外す前に、まず分析条件と発生状況を確認します。

1.いつから高くなったか

次のどのパターンかを確認しましょう。

  • 分析開始直後から高い

  • 移動相やカラムを交換してから高い

  • 試料を注入した後に高くなった

  • 分析を繰り返すうちに徐々に上昇した

  • グラジエントの特定の時間帯だけ高い

発生したタイミングは、原因を絞る大きな手がかりになります。

例えば、移動相の交換直後から圧力が高い場合は、組成や調製の誤り、塩の析出などを疑います。一方、試料を繰り返し注入するにつれて上昇する場合は、試料中の微粒子やマトリックス成分がカラム入口などに蓄積している可能性があります。

2.前回と分析条件が同じか

次の点を、試験法やメソッド、調製記録と照合します。

  • 流量を高く設定していないか

  • 移動相の種類や混合比に誤りがないか

  • カラムの型式、長さ、内径、粒子径が同じか

  • カラム温度が設定値に到達しているか

  • グラジエント条件が正しいか

  • 使用している装置や流路が同じか

流量が高いほど、一般に圧力は高くなります。また、粘度の高い移動相や、粒子径が小さいカラムを使用すると、圧力は上昇しやすくなります。

3.通常時の圧力と圧力波形を比較する

「高い気がする」ではなく、同じ条件での通常値と比較します。

可能であれば、次の情報を残しておくと原因調査に役立ちます。

  • 分析開始時の圧力

  • 平衡化後の圧力

  • 圧力が上昇し始めた時刻または注入回数

  • 圧力波形

  • 直前に行った作業

  • 使用したカラム、移動相、試料

圧力が一定に高いのか、徐々に上がるのか、大きく変動するのかでも疑う原因が変わります。

HPLCで圧力が高くなる主な原因

原因1.流量が高い

まず確認したいのが、メソッドの流量です。

誤って通常より高い流量を設定していたり、別のカラム用のメソッドを使用していたりすると、圧力が高くなります。

装置を動かす前に、試験法や承認済みメソッドと流量が一致しているか確認しましょう。圧力を下げるために流量を変更すると保持時間や分離に影響するため、規定された試験法を自己判断で変更してはいけません。

原因2.移動相の粘度が高い

移動相の種類や組成によって粘度が異なり、粘度が高いほど圧力も高くなりやすくなります。

例えば、次のような場合です。

  • 有機溶媒と水の混合比が誤っている

  • 本来と異なる有機溶媒を使用した

  • グラジエントにより、粘度の高い組成になった

  • カラム温度が通常より低い

グラジエント分析で圧力が一定のパターンに沿って変化し、過去の分析でも同様であれば、必ずしも異常とは限りません。

原因3.移動相中で塩などが析出した

緩衝液と高濃度の有機溶媒が混ざると、塩が析出することがあります。析出物が配管、フィルター、バルブ、カラム入口などを塞ぐと、圧力が急に上昇する原因になります。

移動相を切り替える際は、溶媒同士の混和性や塩の溶解性を確認し、必要に応じて中間洗浄を行います。ただし、洗浄溶媒や洗浄順序は、装置・カラムの取扱説明書等に従ってください。

原因4.カラム入口のフィルターが詰まった

カラム入口には、充填剤が流出しないようにフィルター(フリット)があります。試料や移動相に含まれる微粒子がここに蓄積すると、圧力が徐々に上がることがあります。

特に、次のような場合は注意が必要です。

  • 試料に溶け残りや微粒子がある

  • 試料マトリックスが複雑である

  • 移動相のろ過や管理が不十分である

  • 多数の試料を連続して注入した

  • カラムを長期間使用している

ガードカラムを使用している場合は、分析カラムより先にガードカラムが詰まっている可能性もあります。

原因5.試料成分がカラムに蓄積した

試料中の成分がカラムに強く保持されたり、溶けにくい成分が析出したりすると、使用を重ねるうちに圧力が上昇することがあります。

移動相だけでは圧力が上昇せず、試料やブランクを注入した後に上昇する場合は、注入操作や試料に由来する可能性を考えます。

カラム洗浄を行う場合は、カラムメーカーが示す洗浄方法と使用可能な溶媒を確認します。カラムを逆向きに接続して洗浄できるかどうかも製品によって異なるため、自己判断で逆洗しないことが重要です。

原因6.配管、フィルター、バルブなどが詰まった

圧力上昇の原因はカラム以外にもあります。

  • ポンプ出口側のフィルター

  • インジェクターのニードルやニードルシート

  • サンプルループ

  • インジェクションバルブ

  • カラム前後の配管

  • 検出器のフローセル

  • 廃液チューブ

配管が折れている、押しつぶされている、接続部を締めすぎているといった物理的な問題でも流路抵抗が大きくなることがあります。

原因7.カラム温度が低い、または安定していない

一般に、温度が低いと移動相の粘度が高くなり、圧力も高くなりやすくなります。

カラムオーブンを使用するメソッドでは、設定温度だけでなく、実際に温度が到達・安定しているかを確認します。装置を立ち上げた直後だけ圧力が高く、温度が安定すると下がる場合は、温度の影響が考えられます。

「急に上がった」と「徐々に上がった」で原因を考える

圧力の上がり方を整理すると、原因を絞りやすくなります。

急に圧力が上がった場合

次のような原因を疑います。

  • 流量や移動相組成などの設定ミス

  • 塩や試料成分の析出

  • 配管の折れや閉塞

  • カラムやガードカラムの交換・接続に伴う問題

  • バルブや流路の閉塞

直前に行った変更や作業を確認することが重要です。

徐々に圧力が上がった場合

次のような原因を疑います。

  • 試料中の微粒子がカラム入口に蓄積した

  • 試料マトリックスがカラムに蓄積した

  • 移動相や装置流路が汚染された

  • 微生物汚染が生じた

  • ガードカラムやインラインフィルターが詰まった

「何検体目から上がり始めたか」「移動相だけを送液しても上がるか」といった情報が切り分けに役立ちます。

カラムを外して原因を切り分ける考え方

分析条件に問題が見つからない場合は、流路のどこで抵抗が大きくなっているかを切り分けます。

基本的な考え方は次のとおりです。

  1. 装置を停止し、圧力が十分に下がったことを確認する

  2. 手順書に従ってカラムを外し、必要に応じてユニオンで配管を接続する

  3. 指定された条件で送液し、圧力を確認する

  4. 圧力が大きく下がれば、カラムまたはガードカラム側を疑う

  5. 圧力が高いままであれば、カラム以外の装置流路を疑う

ガードカラムを使用している場合は、ガードカラムと分析カラムを分けて確認すると、どちらが原因かをさらに絞り込めます。

カラムを外しても圧力が高い場合は、ポンプ、オートサンプラー、配管、検出器、廃液ラインなどを、装置メーカーの手順に従って順番に確認します。

なお、高圧がかかった状態で配管を緩めるのは危険です。保護具を着用し、必ず装置を停止して除圧したうえで、取扱説明書や社内SOPに従って作業してください。装置内部の分解や部品交換は、教育を受けた担当者またはメーカーサービスに依頼します。

圧力上昇を防ぐための日常管理

圧力トラブルを完全に防ぐことはできませんが、日常管理でリスクを下げられます。

  • 移動相を正しい組成で調製する

  • 使用する溶媒や緩衝液の混和性、塩の溶解性を確認する

  • 必要な場合は移動相や試料を適切にろ過する

  • 試料に溶け残りや析出がないことを確認する

  • カラムの使用可能圧力、温度、pH、溶媒を守る

  • カラムに適した洗浄と保管を行う

  • 通常時の圧力と圧力波形を記録する

  • 配管の折れ、つぶれ、締めすぎを避ける

  • 装置メーカーが定める保守点検を行う

特に、正常時の圧力を把握しておくことが重要です。正常値がわからなければ、異常の早期発見も難しくなります。

まとめ

HPLCの圧力が高いときは、カラムの詰まりだけでなく、分析条件、移動相、温度、配管、バルブ、検出器より後の流路なども確認する必要があります。

初心者の方は、次の順番で考えると整理しやすくなります。

  1. 同じ分析条件で通常より高いかを確認する

  2. 急に上がったか、徐々に上がったかを確認する

  3. 直前に変更した操作、移動相、カラム、試料を確認する

  4. カラムを外したときに圧力が下がるかを確認する

  5. 下がらなければ、装置流路を順番に切り分ける

圧力トラブルでは、思いついた部品を次々に交換するよりも、発生状況を記録し、流路を一つずつ切り分ける方が原因に早く近づけます。

HPLCのトラブル対応や日常操作を体系的に学びたい方には、『液クロを上手につかうコツ―誰も教えてくれないノウハウ―』が向いています。移動相の調製、装置やカラムの扱い、トラブル対応など、実務で疑問になりやすいポイントを確認できる本です。

 

 

ほかの入門書も比較したい方は、次の記事も参考にしてください。

HPLC初心者におすすめの本5選

 

 

HPLC初心者におすすめの本5選

HPLC(高速液体クロマトグラフィー)を仕事で使うことになったものの、

「何から勉強すればいいのかわからない」

「HPLCの本はたくさんあるけれど、どれを読めばいい?」

と感じる方も多いのではないでしょうか。

HPLCは、実際に装置を操作するだけなら手順書に沿って進めることもできます。

しかし、

● なぜこの移動相を使うのか

● なぜピークが分離するのか

● なぜ圧力が上昇するのか

● なぜゴーストピークが出るのか

● システム適合性をなぜ確認するのか

といったことを理解しようとすると、原理や装置についての基礎知識が必要になります。

特に製薬会社などで分析業務に携わる場合、「測定できる」だけでなく、異常が起きたときに原因を考えられることが重要です。

そこで今回は、HPLCをこれから勉強する人から、実際に分析業務を担当している人まで役立つ本を5冊紹介します。

1.液体クロマトグラフィーを使いこなす―その基礎と計算力―

最初におすすめしたいのが、

『液体クロマトグラフィーを使いこなす―その基礎と計算力―』

です。

HPLCを単に操作するのではなく、クロマトグラフィーの原理から理解したい人に向いています。

HPLCを始めたばかりのころは、

「保持時間」
「理論段数」
「分離度」
「保持係数」

など、聞き慣れない言葉が一気に出てきます。

これらを丸暗記するよりも、クロマトグラフィーで何が起きているのかを理解しておくと、その後の実務がかなりわかりやすくなります。

特に、

「HPLCを使っているけれど、原理をうまく説明できない」

という人が基礎を整理するのに適した一冊です。

 

 

こんな人におすすめ

● 初めてHPLCを担当する人

● クロマトグラフィーの原理から勉強したい人

● 理論段数や分離度などの意味を理解したい人

 

2.液クロ虎の巻―誰にも聞けなかったHPLC Q&A―

次におすすめなのが、

『液クロ虎の巻―誰にも聞けなかったHPLC Q&A―』

です。

日本分析化学会の液体クロマトグラフィー研究懇談会による書籍で、HPLCについての疑問をQ&A形式で解説しています。

内容は、

● HPLCの基礎と理論

● カラム

● 移動相

● 検出・定量

● データ処理

● HPLC装置

● 前処理

など幅広く、実際にHPLCを使用していると疑問に感じやすいポイントが扱われています。

HPLCでは、教科書を最初から最後まで読むより、

「これってなぜ?」

と思ったタイミングで調べることで理解が深まることもあります。

その意味で、手元に置いておいて辞書のように使える本です。

少し古い本ではありますが、クロマトグラフィーの基本的な考え方を理解するという点では現在でも参考になります。

 

こんな人におすすめ

● HPLCを実際に操作し始めた人

● 日々の分析で生じる疑問を解決したい人

● 手元に置いて必要なところだけ調べたい人

 

3.液クロを上手につかうコツ―誰も教えてくれないノウハウ―

HPLCの基本操作を覚えてきたら、

『液クロを上手につかうコツ―誰も教えてくれないノウハウ―』

もおすすめです。

HPLCでは、手順書だけではなかなか身につかない「ちょっとしたコツ」があります。

例えば、

● 移動相の調製

● カラムの取り扱い

● 装置の扱い

● 分析条件の考え方

● トラブルへの対応

などです。

実務では、このような知識の差が分析の安定性に影響することがあります。

先輩から経験的に教えてもらうことも多い部分ですが、それらを体系的に学べるのがこの本の良いところです。

HPLCの原理を学ぶための一冊というより、

「実際にHPLCを使うようになってから読む本」

という位置付けがおすすめです。

こんな人におすすめ

● HPLCを日常的に使用している人

● 基本操作はできるようになった人

● 実務上のノウハウを身につけたい人

 

4.ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)

HPLCをある程度使えるようになると、

「どうしてこのピークは分離しないのだろう?」

という問題にぶつかります。

そこで役立つのが、

『ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)』

です。

HPLCの大きな目的の一つは、目的成分と他の成分を適切に分離することです。

そのためには、

● カラム

● 移動相

● pH

● 有機溶媒

● 温度

● 流量

など、さまざまな要素を考える必要があります。

試験法どおりに測定するだけの段階から一歩進んで、

「なぜこの分析条件なのか」

を考えられるようになるために役立ちます。

特に、試験法の検討や分析条件の変更、分析トラブルの原因調査などに関わるようになった人には参考になると思います。

 

 

 

 

こんな人におすすめ

● ピーク分離について詳しく学びたい人

● 分析条件を検討する機会がある人

● HPLCをもう一段深く理解したい人

 

5.ゼロから学ぶ分析法バリデーション

製薬会社でHPLCを使用するのであれば、

『ゼロから学ぶ分析法バリデーション』

もおすすめです。

HPLCそのものの入門書ではありませんが、製薬会社の分析業務では、

「HPLCで測定できる」ことと「その分析法が目的に適していることを証明する」ことは別の話

です。

分析法バリデーションでは、

● 真度

● 精度

● 特異性

● 直線性

● 範囲

● 検出限界

● 定量限界

などを評価します。

HPLCの操作を覚えたあとにこの考え方を学ぶことで、

「なぜこの試験を行っているのか」

「なぜこの条件で適否を判断しているのか」

という分析業務全体への理解が深まります。

製薬会社のQCや研究開発などで分析を担当する人には、特におすすめしたい一冊です。

 

こんな人におすすめ

● 製薬会社で分析業務を担当する人

● HPLCの操作から一歩進んで分析法について学びたい人

● 分析法バリデーションを初めて担当する人

 

HPLC初心者ならどの順番で読む?

5冊すべてを最初から読む必要はありません。

これからHPLCを始める人なら、

①液体クロマトグラフィーを使いこなす
↓
②液クロ虎の巻
↓
実際にHPLCを操作
↓
③液クロを上手につかうコツ

という流れがおすすめです。

さらに業務内容に応じて、

分析条件や分離を考えるなら
→ ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)

製薬会社で分析法そのものを理解したいなら
→ ゼロから学ぶ分析法バリデーション

へ進むとよいと思います。

本だけでなく、実際のクロマトグラムを見ることも大切

HPLCは本を読むだけですべて理解できるものではありません。

実際に分析を行いながら、

「なぜこのピークが出たのか」

「なぜ保持時間が変わったのか」

「なぜ圧力が上がったのか」

と考え、本で確認することを繰り返すことで理解が深まります。

特にトラブルが起こったときは、HPLCを理解する良い機会でもあります。

このブログでも、HPLCについていくつか記事を書いています。

● HPLCとは?原理を簡単に解説

● HPLCでのゴーストピーク|原因と対策

● HPLCトラブル|ピークが検出されない原因

● HPLCやりがちミス|移動相編

本で基礎を学びながら、こちらも参考にしていただければと思います。

まとめ

今回は、HPLC初心者におすすめの本を5冊紹介しました。

まず原理を理解するなら
『液体クロマトグラフィーを使いこなす』

幅広い疑問を調べるなら
『液クロ虎の巻』

実務上のノウハウを学ぶなら
『液クロを上手につかうコツ』

分離について深く学ぶなら
『ちょっと詳しい液クロのコツ(分離編)』

製薬会社の分析業務まで理解するなら
『ゼロから学ぶ分析法バリデーション』

がおすすめです。

HPLCは、最初は難しい用語が多く取っつきにくく感じます。

しかし、原理と実際の分析を結びつけて理解していくと、トラブルが起きたときにも「何を確認すればいいのか」を考えられるようになります。

これからHPLCを担当する方は、まず自分のレベルや業務内容に合った一冊から始めてみてください。

英語の瞬発力をつける9マス英作文トレーニング◇読書記録

英語の瞬発力をつける9マス英作文トレーニング (サイエンス・アイ新書)

英語を勉強していると、「単語はわかるのに、文章がうまく作れない」という壁にぶつかることはありませんか?この本は、英文の基本構造を9つのマスに分けるというユニークな方法で、英作文の力を着実に育ててくれます。

■ 英文を「9つのマス」に分けて考える新発想

本書の最大の特徴は、英文を主語・動詞・目的語・補語などの文要素に分けて、9マスの表の中に当てはめながら構文を組み立てていくところです。見た目はまるでパズルのようですが、やってみると驚くほど文の構造が見えてきます。

文法書では見慣れたS(主語)、V(動詞)、O(目的語)などの概念も、この9マスに配置することで視覚的に理解しやすくなります。英文を「丸ごと暗記」ではなく、「構造で理解して自分の言葉で組み立てる」ことができるようになるのが、このトレーニングの強みです。

■ 初級者でも取り組みやすいステップ構成

内容は段階的に構成されており、be動詞の文→一般動詞→助動詞→時制の変化→疑問文や否定文と、少しずつ難易度が上がっていきます。

最初は「こんなに分解して意味があるのかな?」と思ったのですが、マスを埋めながら文章を作る作業を繰り返すうちに、自然と語順や文型のルールが身についていくのを実感しました。

特にありがたかったのは、日本語の例文があらかじめ用意されており、それを英語に変換するプロセスを通してアウトプット練習ができる点です。やみくもに書くだけでなく、「何をどこに置くか」を意識しながら練習できるので、英作文の精度も上がります。

■ 「とにかく書く」に頼らない学習スタイル

英作文というと、「とにかくたくさん書いて慣れる」スタイルが多い中で、この本は構造から理解することを重視しています。英語が得意ではない人や、これから英語を基礎からやり直したい人にとっては、感覚に頼らずしっかりルールで組み立てられるこの方法はとても心強いと感じました。

書いて覚えるのではなく、仕組みを理解しながら書く。だからこそ、応用力も自然と育っていきます。


■ まとめ:英文が「組み立てられる」ようになる感覚

英文が「覚えるもの」から「自分で作れるもの」に変わっていく感覚は、ちょっとした快感すらありました。

パズル感覚で英文の骨組みを見抜く練習ができるので、英文法の再確認をしたい方や、英検・TOEICなどの基礎力を固めたい方にもおすすめです。

地道だけど確実に「英語がわかる・書ける」力を育ててくれる一冊。英文がうまく作れないと感じている方は、ぜひ試してみてください。きっと今までと違う視点で英語が見えてくるはずです。

 

「好き」を言語化する技術◇読書記録

「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない (ディスカヴァー携書)

 

『「好き」を言語化する技術』──自分の「好き」をもっと伝えたいあなたへ

『「好き」を言語化する技術』は、自分の「推し」や「お気に入り」について、もっと的確に、もっと熱く語りたいと願うすべての人に向けた一冊です。「やばい!」「最高!」だけでは伝えきれない、その情熱や魅力を、どう言葉に乗せて届けるか。本書は、その具体的な方法とヒントを教えてくれます。​

■ 「好き」を伝える難しさ

私たちは日常的に、映画、音楽、書籍、アートなど、さまざまなものに心を動かされます。しかし、その感動や興奮を他人に伝えようとすると、「なんかすごく良かった!」といった曖昧な表現になりがちです。本書では、そうした「言葉にできないもどかしさ」を解消し、自分の「好き」を的確に、そして魅力的に伝えるための技術を紹介しています。​

■ 言語化のテクニックと実践方法

三宅さんは、具体的なフレームワークや例を挙げながら、感情や感想を言語化する方法を解説しています。​たとえば、五感を使った描写、比喩の活用、具体的なエピソードを交えた説明など、読者がすぐに実践できるテクニックが満載です。​これらの方法を取り入れることで、単なる感想が、相手に響くメッセージへと変わります。

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『「好き」を言語化する技術』は、自分の情熱や感動を、より深く、より鮮明に伝えたいと願うすべての人におすすめの一冊です。​言葉の力で「好き」を共有し、その輪を広げていく楽しさを、ぜひこの本を通じて感じてみてください。

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マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。◇読書記録

マネするだけで「文章がうまい」と思われる言葉を1冊にまとめてみた。

 

仕事での報告書や社内メールなど、文章を書く機会が多い方にとって、この本は頼れる一冊です。初心者向けの内容ではありますが、紹介されている言い回しを使いこなせば、少なくとも「文章が下手」と思われることはないと思います。

 

■ 初心者に優しい構成と実用性

この本では、日常の仕事やコミュニケーションで使える言い回しがシンプルにまとめられています。特に、文章を書くのに慣れていない方にとっては、手元に置いておき、迷ったときにすぐ確認できる実用的な参考書として重宝すると思います。

■ 紙の本で持つことをおすすめ

電子書籍も便利ですが、この本は手元でパラパラとめくりやすい紙の本で持つことをおすすめします。必要なときにすぐに見返せるので、文章を書くときにすぐに手に取れるようにするのが良いと思います。

■ 誰でも使いやすい「文章の型」

初心者向けではありますが、シンプルな構成で、応用範囲も広く、経験者にとっても再確認に使える内容です。報告書やメールだけでなく、日常のやり取りやSNS投稿にも役立つため、幅広い場面で活用できます。

■ シンプルさが伝える力を強化する

本書を読んで感じたのは、「わかりやすさ」に徹している点の素晴らしさです。無駄を省いた言葉選びと、明確な構成が、読む側にしっかりと意図を伝える文章のコツを教えてくれます。

 

「マネするだけで『文章がうまい』と思われる言葉」は、文章術に悩む方への最初の一冊としておすすめです。シンプルで実用的な内容が詰まっており、これ一冊で文章力の基礎が身につくこと間違いなしです。気になったら、ぜひ紙の本で手に取ってみてください。文章を書くたびに役立つパートナーになってくれるはずです。

 

 

 

 

 

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論理的思考とは何か◇読書記録

論理的思考とは何か (岩波新書)

「論理的思考」と聞くと「筋道を立てて考え、誰にでもわかるように説明すること」だと考えていましたが、それは世界共通のものなのではないようです。

論理的思考とは何か では、論理的思考が文化や教育によって形作られることを示し、国や地域ごとに異なる論理のスタイルを紹介しています。読めば、「論理は普遍的である」という前提が、いかに狭い視点だったのかに気づかされました。

「論理的思考」は国によって違う

本書で特に印象的だったのは、「論理の組み立て方は国によって違う」という点です。例えば、アメリカでは「結論を先に述べてから根拠を説明する」のが一般的なスタイルですが、日本では「前置きを丁寧に述べた後に結論に至る」という書き方が多いです。

これを知ると、「論理的思考=結論を明確に述べること」という一般的な定義が、実は欧米中心の考え方なのではないか?と思えてきます。

さらに本書では、国ごとの論理の違いが文化や価値観とも深く関係していることが語られています。例えば、フランスでは「弁証法(対立する意見を並べて、議論を深める)」が重視されるため、異なる意見をあえてぶつけることが一般的。一方で、イランでは「権威ある文献や宗教的背景に基づいて論を展開する」ことが重視されるそうです。

こうした違いを知ると、外国の人と議論するときに「なんでこの人はこんなに対立的なんだ?」とか、「なぜこんなに伝統や権威を重視するんだ?」と思う場面があったとしても、それは単なる個人の考え方の問題ではなく、文化的な影響があることがわかります。

 

本書の最大のメッセージは、「論理的思考が万能ではない」という点にあります。もちろん、論理的に考えることは重要ですが、それが通じるかどうかは、相手や状況によるということです。

本書では、「多元的思考」の重要性が強調されています。つまり、「自分の論理の枠組みを押し付けるのではなく、相手の論理がどう成り立っているのかを理解しようとする姿勢」が大事だということです。これは、異文化コミュニケーションだけでなく、日常の人間関係にも役立つ視点だと感じました。

 

この本を読む前は、「論理的思考=唯一の正解があるもの」と思っていました。でも、本書を読んで、「論理とは状況によって変わるものであり、時には柔軟に使い分けることが大事」という視点が得られました。

日常生活でも、「何が言いたいのかわからない」と感じることがありますが、それは単に話がまとまっていないのではなく、「自分とは違う論理のスタイルを使っているだけ」なのかもしれません。

論理的思考を学びたい人だけでなく、「コミュニケーションのズレに悩んでいる人」にもおすすめしたい一冊です。読むことで、相手の考え方を理解し、よりスムーズな対話ができるようになるかもしれません。