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赤外分光法とは◇原理◇Infrared spectroscopy IR

今日は赤外分光法について解説したいと思います。

赤外分光法 (分光法シリーズ)

 

赤外分光法とは

測定対象に赤外光を照射し、その透過光や反射光を検出して測定対象の赤外スペクトルを得る測定手法です。

多くの場合は得られた一次データをフーリエ変換することでスペクトルをえるフーリエ変換型赤外分光光度計 FT - IRと呼ばれます。

 

原理は

物質を構成する分子は原子が結合しています。

分子内の原子の結合は赤外光を照射されることにより、赤外線のエネルギーを吸収し、伸縮振動や変角振動のような振動をすることになります。

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分子の構造によって吸収される波長や吸収強度が異なりますので、スペクトルを比較することで、測定対象についての情報を得ることができます。

横軸はcm^-1で、日本ではカイザーと言う事もありますが、海外では使用されないようですので、注意が必要です。

試料は数mgでも測定可能で、量の少ない検体についても測定可能です。

サンプルの前処理も通常不要ですので、簡便な分析手法です。

 

用途は

分子構造の違いによってスペクトルが異なりますので、この性質を利用して測定対象物の同定を行うことができます。

また、官能基に特徴的な吸収もありますので、ある程度の構造の推定も行うことも可能です。

また、用途としては少ないですが、ランベルト・ベールの法則を利用することで、吸光度から濃度を算出し、定量的に使用することも可能です。

 

測定種類

・錠剤法

 臭化カリウム(KBr)や塩化カリウム(KCl)などの赤外光に対して透明な試薬を測定対象と混合し、錠剤を形成し、その錠剤の測定を行う手法です。

 粉末試料に対して適用する方法です。

 測定前に試薬のみで作成した錠剤のみをブランクとして測定し、その後試料と混合した錠剤の測定を行います。ブランクと共通する吸収部分は自動的に差し引きされ、試料のみのスペクトルを得ることが可能です。

 錠剤形成用試料としては、多くはKBrが用いられますが、塩酸塩のように塩素を含む場合は塩素イオンと臭素イオンの間でイオン交換が起きるため、本来のスペクトルが得られない場合があります。その場合にはKClを選択する必要があります。

 

・液膜法

 液体を測定する際の手法で、臭化カリウムや塩化ナトリウムの板に液体試料を挟み込み測定します。

 挟み込みに使用する板に傷がついていくとバックグラウンドが上がっていきますので、ベースラインが上がってきたら交換するようにしましょう。

・ペースト法

 粉末試料を液体に混ぜ込み、それを臭化カリウム板に挟んで測定する方法です。一般に流動パラフィン(ヌジョール)が用いられることが多いため、ヌジョール法とも呼ばれます。

ATR

試料に直接赤外光を照射すると、全反射する際に、若干試料へ光がもぐりこみます。このもぐり込みの性質を利用して、反射した赤外光を検出してスペクトルを得る方法です。

 

注意事項

水蒸気や二酸化炭素も赤外光を吸収する性質を持ちますので、試料室内に水蒸気や二酸化炭素があった場合、その吸収も検出してしまいます。

通常はブランク測定で相殺されるのですが、ブランク測定と試料測定の間に水蒸気や二酸化炭素の量が増減するとスペクトルに差が出てしまいます。

ブランク測定と試料測定はあまり時間をあけないようにしたほうが良いです。

窒素によるパージやソフトによる補正でもある程度対応することが可能です。

窒素パージは制御が難しく、ソフトによる補正にも限界がありますので、基本的には装置を設置する部屋は湿度が高くならないよう注意しましょう。

 

 

 

 

 

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